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北区   
茗木坂という坂を下りて、そうするとそこに橋がかかっていて、これが霜降り橋です。それを渡って向こうへ上がって行くと、滝の坂という。これを上がりきってずうっと、左の方へなぞえに行きますとここに一里塚がございまして、で、それをよけてずうっと行きますと、飛鳥山から、それから王子のお稲荷さん……。
 (金原亭馬生(10) 「王子の狐」)
  藤井宗哲編,『金原亭馬生集成』 第一巻,旺国社(1976)

地点名 この1題・登場回数 位 置 備 考 写真と撮影年月
岩淵 いわぶち 雪鴉(落語見取り図, うなぎ書房 (2005)) 北区岩渕町 古典落語には登場しない.岩槻街道岩淵宿.問屋場址碑がある.水門は隅田川と荒川放水路との分岐点にあたる.役目を終えた赤水門と現役の青水門が並んでいる.
"新河岸川から岩淵辺りへ迷い込んだ頃にはもう年の暮れ"(雪鴉)
岩淵水門 0801
赤羽 あかばね 野晒し(三一談志2:01) など 15件4題 (圓朝1件, 東京14件) 北区赤羽あたり → 上野.ずいぶんと辺鄙なところなのに古典落語に登場.赤羽≠屍,轆轤≠髑髏,猫≠回向,狸≠手向け.
"何うも一時間をここに待っていることができない。すると八時五十五分に赤羽行きの汽車が発車します報せがあります"(因果塚の由来)
     
十条 じゅうじょう 野ざらし(太田藤志楼1:01) など 2件2題 (東京2件) 北区上十条付近 ここは十条といわれても...演題を見て想像できるように,シカバネからの洒落.
"シカバネ、知ってますよ、十条からこうずーっと行って"(野ざらし)
ここは十条 0906
王子 おうじ 王子の幇間(講明治大正1:15) など 57件23題 (圓朝7件, 東京50件) 北区王子あたり → 北村辞典.王子権現に由来.大晦日,関東中の狐が装束榎に群集し装束を整えて王子稲荷へ集まった.装束稲荷境内に蜀山人の句碑がある."いざあけんえび屋扇屋とざすとも王子の狐かぎをくはえて".海老屋は「王子の狐」が無銭飲食した料亭で,海老錠とかけている.
"王子へ行ったと、少しは当たった、狐にでも化かされやァしないかと言っていたのだ"(緑林門松竹)
装束榎あと 0902
名主の滝 なぬしのたき 王子の狐(弘文柳枝:25) など 2件1題 (東京2件) 北区岸町1-15 王子稲荷の先の崖地にある.王子七滝の一.王子の名主畑野孫八が幕末安政年間に開いた.所有者が移り,今は区立の庭園内にポンプアップされた人工の滝が4つ配されている.
"名主の滝なんぞといろんな名所もございますが、王子というところァ大変に名所のあるとこで"(王子の狐)
名主の滝雄滝 0510
王子稲荷 おうじいなり 王子の狐(講昭和戦前1:02) など 33件7題 (東京33件) 北区岸町1-11 → 北村辞典.関東の稲荷の総元締.狐の御穴もある裏山が特にいい.「王子の狐」だけでなく,東京に移された「稲荷俥」はここを舞台.
"扇屋のお客は誰が呼ぶんだ。扇屋ばかりで呼ぶんじゃアないよ。王子の稲荷様というものが御主人だ"(王子の狐)
王子稲荷裏山 0903
装束榎 しょうぞくえのき 夜桜(落語見取り図, うなぎ書房 (2005)) 北区岸町2-30 古典落語には登場しないが,王子探訪には欠かせない場所.装束稲荷社殿の脇に碑と植え継がれたのであろう榎がある.大晦日には王子稲荷へ向かう稲荷が装束を整えた.広重の名所絵にあるように,この晩には狐火が群れ,村人はこれで豊作を占った.ふだんはひっそりしているが,装束稲荷の初午祭りは神楽や甘酒奉仕も出てにぎやか.
"東の方に装束榎と呼ばれる榎の古木がありまして、そこで狐が装束を改めてお稲荷さんへ集まったんだそうで"(夜桜)
装束榎碑 0902
王子権現 おうじごんげん 粟田口霑笛竹(角川円朝2:01) など 3件2題 (圓朝1件, 東京2件) 北区王子本町1-1 → 北村辞典.王子神社.熊野権現を祀る.「紀州」で将軍となった吉宗の出身地だけに信仰が篤かった.境内に掲示してあるおみくじの神歌は必見.50本中に大凶が3本もあった."邪しまの心ますますさかりにて人を羨み世をばかこちて".
"王子の権現さまから帰りがけに、お父さまは何者とも知れず、日暮ヶ岡にて鉄砲で撃ち殺されました"(粟田口霑笛竹)
王子神社おみくじの神歌 0902
音無川 おとなしがわ 王子の狐(旺国馬生1:02) など 2件2題 (東京2件) 北区 王子権現の下を流れる石神井川.紀州熊野権現の音無川に対応.音無川といいながら堰があり,ドンドンと水を落としていた.いま,親水公園に整備されており,川の水はトンネルで東へ分流されている.
"音無川といいますが、あの川がずうーっと今のちょうど国電の京浜東北でございます"(王子の狐)
音無橋 1112
扇屋 おうぎや 王子の狐(講明治大正2:45) など 31件5題 (圓朝1件, 東京30件) 北区岸町1-1 → 北村辞典.料理屋.創業慶安元(1648)年という.巨大な釜焼玉子が名物.狐に化かされぬよう硫黄のついた附木を添えた.今,店舗はなく玉子焼きのみ露店売り.釜焼玉子は予約注文に応じて焼いてくれる.「王子の狐」が飲み食いしたのは,この扇屋か廃業した海老屋.
"その頃には海老屋、扇屋の他によい料理茶屋がありまして、柏屋というはかなり小綺麗にしておりました"(菊模様皿山奇談)
扇屋釜焼玉子 0608
王子の製紙場 おうじのせいしば 松と藤芸妓の替紋(角川円朝3:08) など 3件3題 (圓朝1件, 東京2件) 北区王子 音無川の水を利用し,1875(明治8)年抄紙会社が王子に開かれる.1893(明治26)年に王子製紙となる.この頃まで,王子の名所として登場.紙の博物館は飛鳥山に移転した.たしか百万塔が展示してあった.
"化物屋敷の簾のようにずたずたになって、王子の製紙場へやってもよろしいという結びだらけの細帯"(松と藤芸妓の替紋)
紙の博物館 8711
飛鳥山 あすかやま 花見の仇討(三一談志4:17) など 49件27題 (圓朝6件, 東京42件, 上方1件) 北区王子1 → 北村辞典.将軍吉宗によって整備された桜の名所.鳴物を禁じる寛永寺の上野の山を避けて,『八笑人』,「花見の仇討」は飛鳥山で演じる.飛鳥山タワーがなくなって久しいが,淫靡な雰囲気のさくら新道も消えてしまうのだろうか.と書いていたのだが,2012年,失火によって大半が焼け,取り壊されてしまった.
"拙者は粂野美作守家来渡辺織江と申す者、今日仏参の帰りみち、これなる娘が飛鳥山の花を見たいと申すので連れまいり"(菊模様皿山奇談)
飛鳥山さくら新道 0903
飛鳥山:石碑 せきひ 花見の仇討(三一大系5:17) など 2件2題 (東京2件) 北区王子1-1 飛鳥山公園にある石碑で元文2(1737)年に建てられた.飛鳥山に桜を植樹させた将軍吉宗を顕彰するもの.漢文びっしりでちんぷんかんぷん."この花を折るなだろうと石碑見る"(柳多留)."李白だと見えて石碑を読んで居る".酔眼の李白の面目躍如.
"朝早くから飛鳥山へまいりまして石碑のあたりの桜の木の根方に腰をかけて"(花見の仇討)
飛鳥山碑 1104
石神井川 しゃくじいがわ 瀧の川(玄文珍日本:14) 1件1題 (東京1件) 北区 滝野川あたりの石神井川は,王子の台地を削り,渓谷をなして滝があった.旧石神井川の河道が音無さくら緑地に整備されている.崖地から湧水がしたたっており,古代の風景を思わせる.
"石神井川を中にした小山に紅葉が多くあります"(瀧の川)
旧石神井川 0902
滝野川 たきのがわ 敵討札所の霊験(角川円朝2:03) など 10件7題 (圓朝4件, 東京6件) 北区滝野川 → 北村辞典.別項の王子音無川の上流部.かつては紅葉の名所で,石神井川にかかる紅葉橋や紅葉寺の別名を持つ金剛寺がある.北区の前身は滝野川区.
"お前さん、瓢箪を紅葉の枝へつけてお通んなはいましたねえ、滝の川へいらっしゃったの、御様子のいいこと"(敵討札所の霊験)
紅葉寺金剛寺 1112
不動堂 ふどうどう 瀧の川(玄文珍日本:14) 1件1題 (東京1件) 北区 滝野川には紅葉寺あり,不動の滝があり風光明媚な土地だった.那智の滝を思わせるように描かれた滝は跡形もないが,正受院に滝不動堂がある.
"瀧の川の不動堂に滝がありまして"(瀧の川)
滝不動堂と不動尊 0509
一里塚 いちりづか 王子の狐(旺国馬生1:02) など 2件2題 (東京2件) 北区西ヶ原2 現存.王子への道のりの説明.岩槻街道の一里塚で,都内で現存するのはここと中山道志村一里塚だけ.
"左の方へなぞえに行きますとここに一里塚がございまして"(王子の狐)
西ヶ原一里塚 0903
六阿弥陀の堂 ろくあみだのどう 瀧の川(玄文珍日本:14) 1件1題 (東京1件) 北区西ヶ原1-34 六阿弥陀は「芝居風呂」に出てくる.遊山がてら彼岸に詣でる習慣があった.ここでは第3番西ヶ原の無量寺のこと.門前には六阿弥陀を示す石碑が多い.
"西が原へ出ると六阿弥陀の堂がありまして、飛鳥山の下へ出る"(瀧の川)
六阿弥陀第三番無量寺 0903
霜降橋 しもふりばし 王子の狐(旺国馬生1:02) 1件1題 (東京1件) 北区西ヶ原1 霜降橋交差点のところにかかっていた.川は谷田川.現在は暗渠で,別項の文京区の藍染橋へつながる.写真のバス停は坂を上ったところ.背後にある建物はお寺ではなく,亀の湯の昔ながらのたたずまい.
"そこに橋がかかっていて、これが霜降り橋です"(王子の狐)
霜降橋バス停 0903
争いの杉 あらそいのすぎ 瀧の川(玄文珍日本:14) 1件1題 (東京1件) 北区田端6-9 今の田端中学あたりにあった大杉.その大きさのため杉か松か争いになったという.
"道灌山へさしかかって、畑地へ出ますと、小高い岡の上にあるのが争いの杉と言う名木でした"(瀧の川)
     
東覚寺 とうがくじ 菊模様皿山奇談(角川円朝4:01) 1件1題 (圓朝1件) 北区田端2-7 → 北村辞典.真言宗豊山派東覚寺."不動様のお堂"は本尊の不動明王だろう.門前の赤紙仁王は患部に赤紙を貼って平癒を祈願.裏道に面していたが,道路開発で大変なことになっている.
"わしの村の鎮守様は八幡様でごぜえます、その別当は真言宗で東覚寺と申します"(菊模様皿山奇談)
東覚寺赤紙仁王 0506
田端八幡 たばたはちまん 菊模様皿山奇談(角川円朝4:01) 1件1題 (圓朝1件) 北区田端2-7 東覚寺の東に隣接する.田端の産土神.東覚寺が別当寺.「菊模様皿山奇談」では,毒殺目的に田端の畑でハンミョウを捕まえさせる場面.
"毒なア虫でごぜえますから、籠へ入れて蓋をしては持って参ります。ムムウ、それは何ういう虫だえ。あの斑猫てえ虫で"(菊模様皿山奇談)
田端八幡 0906

掲載 051012/最終更新 160201

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