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塩原多助後日譚   
−しおばらたすけごにちものがたり−

 「塩原多助一代記」の続編.長らく初代金馬演が伝わっていただけだが,2000年に岩波書店から圓朝版が復刻された.もとは,1900年に圓朝の遺稿を日出国新聞に連載したもの.その年いっぱいで連載がいったん中断し,再開前に新聞社が焼失してしまったため未完である.くらべてみると雲泥の差で,金馬版は話をなぞっているだけにしか感じられない.圓朝の紡ぎ出す言葉には魅力がある.

 大あらすじ
 正直な商売と機敏な投資で,ますます繁昌の塩原炭屋.故郷の下新田で先祖を供養し,生涯の絶頂に立つ.この後の没落は微塵も感じさせない.
 津軽家の出入りに
 多助の留守中,津軽家の賄方の橋口が来て,千俵の炭の注文.お花150両で売る−多助戻り,高額ゆえ返金に−橋口,性根を誉めるが,自分の落ち度になるため受け取らず−多助,重役の小田切に会い,75両返金し,橋口の落ち度でないと訴える
津軽藩上屋敷跡
 道連れ小平の最期
 安永元(1772)年,行人坂の火事で主家の山口屋が避難.金を預かり本所へ−すぐに下野の吉田屋で薪炭,草履などを買い占める−山口屋,千両の儲け−多助へ500両と紀文の千両箱を無理に渡す−多助,その金で売れ残った屋根板を買い占め−深川に大嵐.再び儲かる/1773年2月,多助の留守中,武士が訪問−火事で釈放された道連れ小平が,博奕で取られた腹いせに,お亀を匿っていることを種に塩原屋から300両を強請る−話を聞いた侍が100両渡すと連れだし,割下水で斬り捨てる.侍は多助の父の角右衛門
野州飛駒村
 はじめての吉原
 1774年,吾妻橋架橋につき,柳橋で炭屋の寄合.遅れた多助の悪口−よんどころなく多助も吉原の二次会に参加−いったん帰宅して高額の祝儀を用意−吉原山口巴に遅参.お供と間違われ玄関先で待たされる.多助の悪口−ようやく2階に招かれる.祝儀を開いてみた芸者幇間連の態度が一変する−炭屋連中,祝儀含む割り前で大損
花の吉原
 下新田の大法会
 1776年,養父角右衛門の十七回忌を計画−実父角右衛門に挨拶し,下新田へ−家出の身ゆえ,五八に間に入ってもらい,法会と名主宅で施行の相談.お作の婿の甚三郎が売り払った田畑を買い戻す−施行の最中,ならず者の仁太郎とお作の夫甚三郎が来て強請り−甚三郎は田畑の権利を主張−名主助左衛門,甚三郎の人別がなく勘当の身だと却下−沼田原に青供養の庚申塚を建立−再び仁太郎と甚三郎が襲ってくる−青の霊,実は久兵衛の馬が現れて悪漢を追い払う−(ここで中断)
下新田塩原家墓所
 
 初代金馬が演じると
 多助の店に道連れ小平が現れ,おかめを匿うことを種に塩原屋を強請る.居合わせた父の角右衛門が100両渡すと連れだし,本所で小平を斬り捨てる/おかめ死亡/明和5(1768)年,多助が飛駒へ仕入れに行った留守に,お花が津軽家に炭を収める.帰宅後,その値が高額ゆえ返金/1772年7月,重病との報せを受け,下新田に太左衛門を見舞う−青塚建てる.太左衛門死亡,法事−帰路,榛名山に愛用の天秤棒を奉納/1774年,炭屋の寄合で多助に恥をかかせる計画.事前情報があり山口巴へ金を渡しておく.吉原で炭屋連中,逆に恥をかく/1816年,多助死去.翌年,お花死去.息子の彦太郎が二代目多助,四万太郎が番頭角右衛門に−角右衛門,店の金を使い込み,客の喜六から預かった金を証文がないため返金しない−入水した喜六の水死体が店に流れ着く−処理した店員が水死.女房が狂死.角右衛門も喜六の霊を見て水死.塩原家に幽霊が出るという評判
塩原太助墓

 はなしの足あと
 津軽家(墨田区亀沢町)への返金,道連れ小平の最期(墨田区),吉原での炭屋連への逆ねじ,下新田の法要からなる.それぞれ,圓朝と金馬で演出が異なっている.この後,おいおい怪談になるはずだが未刊に終わった.
 はなしの人びと
岩田屋久八 いわたやきゅうはち (1733-) 空き樽買い.多助の義父.
えい (1742-1761.09.03) 多助の最初の妻.登場しない.
小田切治部 おだぎりじぶ   津軽家重役.
かめ (1724-) 養父の後添.下新田の家を放火して脱出.盲目になり多助に養育される.
勘蔵 かんぞう   塩原屋の手代.
幸右衛門 こうえもん   円次郎の父.塩原多助伝では幸兵衛.
五八 ごはち   養父角右衛門の奉公人.
三太郎 さんたろう   塩原屋の丁稚.
塩原多助 しおばらたすけ (1741-1816) 角右衛門の子.8歳で養父角右衛門に.殺されかけ江戸へ.炭屋山口屋へ奉公.独立しお花と結婚.繁盛するが2代目の時に没落.
四万太郎 しまたろう (1762.09.29-) かめ,丹治の子.右の助と改名.
甚三郎 じんざぶろう   お作の夫.放埒で田畑売りつくし失踪.
助左衛門 すけざえもん   幸右衛門亡き後の下新田の名主.
せい   実父角右衛門の妻.
太一 たいち   お作の子.
太左衛門 たざえもん   塩原分家.養父角右衛門の甥.
仁太郎 にたろう   勢多の仁太郎.ならずもの.
橋口金吾 はしぐちきんご   津軽家賄役.
はな (1751-1817) 多助の妻.
藤野屋杢左衛門 ふじのやもくざえもん   お駕籠御用達.花の父.
道連れの小平 みちづれのこへい (-1773.2.3) かくの子.度重なるゆすりに失敗し,角右衛門に斬られる.
山口屋善右衛門 やまぐちやぜんえもん   神田の炭問屋.多助の命を助け,奉公人に雇う.

掲載 090101/最終更新 100805

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