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火中の蓮華   
−かちゅうのれんげ−

 明治30年,中央新聞に連載.圓朝全集から漏れている.名人名演落語全集の第一巻に掲載.井上馨に同行して静岡を旅した見聞を取り入れ,千箇寺詣りの夫婦を圓朝らが目撃するシーンから始まり,現実と創作とが交錯している.しかし,その後は「鰍沢」「鰍沢二席目」のプロットがそっくり使われている.本歌取りの楽しさを感じるか,創作力の枯渇と見るかで評価が別れよう.

 大あらすじ
 伊豆を旅する圓朝が見た盲目の夫とそれを支える婦人.父を殺した同じ犯人に,今度は2人が鰍沢で殺されかける.船で逃走しようとする犯人を捕まえられるのか.
 圓朝登場
 明治29(1896)年.圓朝,貴顕と伊豆へ旅行.幾度か千箇寺詣りの夫婦に会う−身延でも再会.聞けば夫の眼病平癒を祈願,義父の篠井金兵衛は21年前に行方不明との話
伊豆獅子浜
 鰍沢二席目
 21年前.清元延峰と篠井金兵衛,身延参詣−悪徳駕籠屋に乗ると,路銀を忘れてしまう.金兵衛,茶屋の亭主勝五郎に火縄を借りて,夜道を駕籠屋を探しに出る−勝五郎,火縄目当てに金兵衛を射殺−すべて延峰とぐるで仕組んだ策略
身延山日蓮御草庵跡
 鰍沢
 話戻って,1897年1月27日,篠井兼之丞お浪夫婦,身延そば榧の木峠で雪に難渋−とある庵室に泊まる.庵主は盲人−盲人二人で留守番.ふるまわれた蕎麦湯を飲む−そこへ朝香帰宅.蕎麦は毒入りだった−兼之丞は小室山の毒消の護符で体が効く.庵主の朝伝は毒死−お浪戻る.朝香,鉄砲もって追いかける−2人,富士川へ落ち込む−兼之丞,材木につかまって流される
榧の木峠
 しまいは法華長屋
 お浪,ツタ葛に引っかかっているところを,村岡警部に救われる−兼之丞は船頭に救われる−両人,南部で再会−朝香,船で富士川を逃げようとするところを村岡警部に捕縛される/ここで「法華長屋」のつかみこみ/毒死した朝伝は実は勝五郎,朝香は実は父を殺した延峰だった−朝香死刑
富士川

 はなしの足あと
 身延山の様子は実に細かく描かれている.圓朝一行は静浦,修善寺,興津から身延に入る.そこここで千箇寺詣りの夫婦に出会う.夫婦は榧の木峠の庵室で延峰に殺されそうになる.延峰は甲州街道から身延詣りの後,西行峠で旦那を殺していた.ついに延峰は南部で捕縛.興津から南部へかけての道中付けも詳しい.

 はなしの人びと
いね   篠井金兵衛の妻.登場しない.
圓朝 えんちょう   三遊亭圓朝[1839-1900].貴顕と身延旅行.
勝五郎 かつごろう (-1897.01.28) 後に朝伝として庵室にいる.盲人のふり.毒殺される.
傷松 きずまつ   駕籠屋の一人.
篠井金兵衛 しのいきんべえ (-1876) 品川天王前の煙草屋主人.行方不明.実は勝五郎に撃ち殺される.
篠井兼之丞 しのいけんのじょう (1870-) 元旗本で,京橋の煙草屋.後に金兵衛を継ぐ.盲目となり千箇寺詣り.
なみ (1873-) 主人公.24歳.夫,兼之丞の眼を治すため千箇寺詣り.
延峰 のぶみね   清元師匠,別名題目お峰.篠井金兵衛を欺く.後に朝香.兼之丞らを殺人未遂,死刑.
禿虎 はげとら   駕籠屋の一人.
村岡某 むらおかなにがし   興津分署の二等警部.お浪を救う.

掲載 090101/最終更新 100805

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