火中の蓮華 | ||
−かちゅうのれんげ− 明治30年,中央新聞に連載.圓朝全集から漏れている.名人名演落語全集の第一巻に掲載.井上馨に同行して静岡を旅した見聞を取り入れ,千箇寺詣りの夫婦を圓朝らが目撃するシーンから始まり,現実と創作とが交錯している.しかし,その後は「鰍沢」「鰍沢二席目」のプロットがそっくり使われている.本歌取りの楽しさを感じるか,創作力の枯渇と見るかで評価が別れよう. |
大あらすじ | |
伊豆を旅する圓朝が見た盲目の夫とそれを支える婦人.父を殺した同じ犯人に,今度は2人が鰍沢で殺されかける.船で逃走しようとする犯人を捕まえられるのか. |
はなしの足あと | |
身延山の様子は実に細かく描かれている.圓朝一行は静浦,修善寺,興津から身延に入る.そこここで千箇寺詣りの夫婦に出会う.夫婦は榧の木峠の庵室で延峰に殺されそうになる.延峰は甲州街道から身延詣りの後,西行峠で旦那を殺していた.ついに延峰は南部で捕縛.興津から南部へかけての道中付けも詳しい. |
はなしの人びと |
稲 | いね | 篠井金兵衛の妻.登場しない. | |
圓朝 | えんちょう | 三遊亭圓朝[1839-1900].貴顕と身延旅行. | |
勝五郎 | かつごろう | (-1897.01.28) | 後に朝伝として庵室にいる.盲人のふり.毒殺される. |
傷松 | きずまつ | 駕籠屋の一人. | |
篠井金兵衛 | しのいきんべえ | (-1876) | 品川天王前の煙草屋主人.行方不明.実は勝五郎に撃ち殺される. |
篠井兼之丞 | しのいけんのじょう | (1870-) | 元旗本で,京橋の煙草屋.後に金兵衛を継ぐ.盲目となり千箇寺詣り. |
浪 | なみ | (1873-) | 主人公.24歳.夫,兼之丞の眼を治すため千箇寺詣り. |
延峰 | のぶみね | 清元師匠,別名題目お峰.篠井金兵衛を欺く.後に朝香.兼之丞らを殺人未遂,死刑. | |
禿虎 | はげとら | 駕籠屋の一人. | |
村岡某 | むらおかなにがし | 興津分署の二等警部.お浪を救う. |
掲載 090101/最終更新 100805