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霧陰伊香保湯煙   
−きりがくれいかほのゆけぶり−

 明治22年,やまと新聞に連載.伊香保や四万の温泉風景,道々が細かく描かれている.明治期の設定なので,仇を目の前にしても,刀を振り回すわけにはいかず,結末の処理がしっくりといっていない印象.

 大あらすじ
 松五郎とお滝の2名,次々と名前を変え,悪事を重ねて行く.美人局の場に,関係者全員が勢揃い.
 足利の間違い
 明治5(1872)年,足利の機屋の茂之助,芸者お滝に入れあげ,身請け−友人治平から,お滝には男があると聞き,旅に出たふり.すると留守宅に松五郎が訪ねてくる−茂之助,間男見つけたと踏んごむが,隣人に分けられる−30円の手切れ金でお滝を離縁.お滝と松五郎は,あてつけがましく近所に所帯を持つ/茂之助,偶然出会ったお滝と口論,松五郎帰ってきて逆にやられる−妻のくのに脇差しを出させて,お滝らを殺しに行く−くの,先回りしてお滝に逃げろと忠告−茂之助,誤ってくのと赤ん坊を殺す.茂之助自殺
足利学校
 伊香保から四万温泉
 1874年6月,橋本幸三郎,伊香保行き−伊香保の様子こまごま−癪に苦しむ女を助ける−女らと伊香保の向山で,芸妓の小峰を呼ぶ−隣座敷の客がごね,筏乗りの市四郎が割ってはいる/橋本一行とお藤ら,四万温泉の積善旅館へ別々に移動−四万温泉の様子こまごま−四万の女中のおりう,滝川左京の娘とわかり,50両で請け出す約束−一方,車夫の峰松と杢八,お藤と岩を乗せる.途中の山道で2人を襲う.お藤は谷底へ落ち,岩は死亡−断崖の藤蔓にからまるお藤を,市四郎が助ける−峰松,実は松五郎,積善に忍び込みこそ泥.おりう,実はお滝と出会う.峰松,逃亡−橋本,約束通り,おりうを身請けし,橋場に囲う
伊香保温泉源泉
 野田のツク舞い
 1875年9月,橋本,橋場の妾宅を訪ねると,賊の入った跡.おりう行方不明/1878年7月,野田の祇園祭.橋本,亀甲萬に奉公している13歳の布巻吉が,祖父の奥木佐十郎に仇討をしたいと言うのを聞く−そこで,奉公の暇をとり,足利へ向かう途中,橋本,奥木,市四郎らが出会う−市四郎に連れられ,橋本,お藤に会う.布巻吉,剣術をならう/桑原,伊香保で美人局にかかり,もめているところへ,橋本ら関係者がみな乗り込む.松五郎,お滝改心,逮捕−松五郎,死刑.桑原と松五郎の妹の小峰夫婦に.幸三郎とお藤夫婦に
野田の醤油発祥地碑

 はなしの足あと
 伊香保温泉と四万温泉の湯場風景,名所が詳しい.1)伊香保から西へ行って四万へ向かうルートと2)渋川から吾妻川沿いに向かう2つのルートの道中付けが出てくる.その他,野田愛宕神社の祇園会の様子や,3)野田から川俣へ向かう船旅が描かれる.

 はなしの人びと
市四郎 いちしろう   市城村の筏乗り.お藤救うなどの働き.
いわ (1832頃-1874) お藤の下女.杢八,峰松に殺される.
岩延伝衛 いわのべつたえ   深川佐賀町.お高(滝)の兄という虚構の人物.
岡村由兵衛 おかむらよしべえ   木挽町.袋物屋.橋本幸三郎と常に同道.
奥木佐十郎 おくのぎさじゅうろう (1813-) 元戸田采女正の家来.足利の機屋.
小栗上野介 おぐりこうずけのすけ [1827-1868] 小栗忠順.駿河台.外国奉行,町奉行.死刑.
くの くの (1846-1872.07.17) 茂之助の妻.茂之助に殺される.
久留島修理 くるしましゅり   元九段坂上.瑞穂野村でお藤預かる.
桑原治平 くわばらじへい (1836-) 渋川の商人.茂之助に意見.美人局に会う.
小峰 こみね (1856-) 松五郎の妹.伊香保の芸者.桑原と結婚.
さだ (1872.02-1872.07.17) 茂之助の子.茂之助に刺殺される.
たき (1872-) 元芸者小滝.茂之助の妾.松五郎の情婦.おりうとして幸三郎の妾.お高として桑原を詐欺.
布巻吉 つまきち (1866-) 茂之助の子.お定の兄.仇討決意.
橋本幸三郎 はしもとこうざぶろう (1838-) 霊岸島川口町.元御用達.りうを囲う.お藤と結婚.
ふじ (1851-) 小栗上野介の娘.夫,妹死亡し(1877),久留島が預かる.幸三郎と結婚.
村上松五郎 むらかみまつごろう (1847?-) お滝の情夫.峰松としてお藤襲う.谷沢として桑原だます.死刑.
杢八 もくはち   渋川の車夫.お岩を殺す.
茂之助 ものすけ (1840-1872.07.17) 奥木佐十郎の子.誤って妻子殺し自殺.
やま やま (1828-) 松五郎,小峰の母.伊香保で茶店婆.

掲載 090101/最終更新 100805

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