HOME >> 圓朝作品のあらすじ >> prev 黄薔薇 next
黄薔薇   
−こうしょうび−

 フランスの小説,「毒婦ジュリアの物語」を翻案したとされる.明治20年の出版.いかにも西洋風のストーリー.明治初期の話だが,矛盾があって年代を決めることができない.東京のほか,古河,高崎,野木が舞台となる.

 大あらすじ
 前途有望な官員の江沼は,元老院議長の道野辺と毒婦お吉の策略により,妻を寝取られ,失職の末,自殺する.これに怒った書生は,お吉を殺し,道野辺を辞職させる.
 道野辺の政略
 明治期.9月,元老院議長道野辺の妾お吉に頼まれ,士族の馬場良介芝居見物.江沼に会う−お吉,江沼に差しいれして家に誘う−お吉宅へ礼に行く.ひきとめられお吉と同衾−これは道野辺の江沼を失脚させようという企み−お吉,江沼に惚れ,夜明け前に無事帰す/良介の勧めで江沼辞職,お吉へ手切れと手紙を用意−お吉,道野辺に江沼側につくと告げる.道野辺怒り,お吉を捨てる−良介,江沼の手紙をお吉に渡す−これを見たお吉怒り,再び道野辺側へつく
新富座あと
 お万の幸せ
 江沼,馬場の知り合いの生間を頼り,古河に暮らす.生間の娘,お万が世話役−江沼とお万,結婚することになる−6月18日,両国の船遊びで,江沼ら,お吉と連れの美濃部を見かける.美濃部は江沼の学友−お吉,美濃部を江沼宅へ出入りさせる−江沼,復職.翌年,お万との間に子供ができる
古河一里塚
 お万の苦しみ
 書生風の2人組,江沼に金を無心,匕首で刺殺しようとする.実は道野辺の遣わせた刺客.江沼は柔術で撃退−江沼,箱根へ湯治.留守中,お万の継母が死去−お万葬儀に向かう.お吉からもらったクロロホルムを忍ばせた美濃部が同行−お万を美濃部が暴行−美濃部の奉公人の曽和蔵を買収し,お万の書いた手紙2通を盗み出す−1通を持ってお万の宅へ行き,手紙を渡す−お万,驚いて美濃部に相談−美濃部,お吉に掛け合うが全く相手にされず−江沼,湯治から戻る.お万,書き置き残して美濃部と出奔−江沼,美濃部の策略と気づくがいったん辞職.赤ん坊の仁太郎を連れ,古河の生間宅へ挨拶−仁太郎を乙女村に住む旧家来の藤蔵夫婦に預け,美濃部を探す−高崎から信州,木曽,北陸と探し,再び戻った高崎で美濃部・お万を見かける
乙女村八幡
 高崎山の決闘
 7月17日,美濃部に面会,夜分に高崎山で決闘を申し込み−訪ねてきたお万に,仁太郎を引き取るよう説諭−8月末,ようやく藤蔵を訪ねたが,留守中に栃木県令の命で仁太郎は引き取られていた−やむなくお万は古河へ向かうが,藤蔵の息子で車屋の伊三郎らに襲われる−藤蔵,割って入り説諭.伊三郎,改心し,江沼の消息を話す−お万の父,生間,発狂の末死亡.お万,尼になる/話戻って,高崎山の決闘−お互いに自分を刺せといいあう.結局,江沼,自死−美濃部は高鍋へ
高崎観音
 毒婦お吉の最期
 10月8日,雨宿りでお吉宅の軒先を借りた商家の若旦那.お吉,色仕掛けでその財産を奪おうとたくらむ−お吉の所へ若旦那,頻繁に訪れる−11月26日,気づいた大旦那がやって来るというので,あわててお吉らを芝居へ出かけさせる−お吉が戻ってみると全財産が盗まれている.若旦那とは伊三郎らの仮の姿−そこに大勢の書生が押し寄せ,前途ある江沼を自滅させたと群馬新誌片手になじり,お万を撲殺−翌日,品川で遊興中の道野辺を取り囲み,醜聞をネタに辞表を書かせる.伊三郎自首
群馬の郷土紙 上毛新聞

 はなしの足あと
 新富座(中央区新富)でのお吉,江沼の出会いが発端.お吉の家は下谷練塀町(千代田区神田練塀町),旦那の道野辺は三番町(千代田区九段北・南).江沼の家は駿河台甲賀町(千代田区神田淡路町)だが,いったん職を辞して古河に退く.古河の様子が詳しい.江沼は木賀(箱根町)に湯治したが緩解せず,美濃部を追って北陸まで行く.1,2) その経路は飛び飛びすぎて道中付けの面白味はない.美濃部と決闘する高崎の様子は詳しい.3) お万は野木神社で車夫に襲われる.

 はなしの人びと
伊三郎 いさぶろう   藤蔵の子.お万を襲う.お吉を欺す.
江沼実 えぬまみのる (1851?-1881?.07.17) エムマニエル.主人公.26歳.前途有望な官員だったが,スキャンダルで自殺.
きち (1853?-1881?.11.26または12.26) ジュリア.24歳.道之辺の妾.江沼をおとしいれようとして,結局書生らに殺される.
紅葉万次郎 くれはまんじろう   マンチーノ.足軽.特に活躍しない.
くわ   紅葉万次郎の娘.特に活躍しない.
桑出数衛 くわでかずえ   道野辺の書生.江沼を刺殺しようとする.
さつ   藤蔵の妻.
しの   ジョセヒー.生馬の妻.死亡.
島野幸三 しまのこうぞう   道野辺の書生.江沼を刺殺しようとする.
生馬忠右衛門 せいまちゅうえもん   ゼルマンチー.土井家家臣.古河在住.死亡.
曽和蔵 そわぞう   美濃部の奉公人.美濃部の大事な手紙を盗む.
高瀬藤蔵 たかせとうぞう   江沼の元奉公人.仁太郎預かる.
たみ   藤蔵の先妻.伊三郎の母.死亡.
仁太郎 にたろう (1879?-) 江沼とお万の子.成長して江沼を継ぐ.
馬場良介 ばばりょうすけ (1836?-) バロン.41歳.士族.江沼と旧知.
まん (1861?-) マーリー.16歳.生馬の子.江沼の妻.結局美濃部と逃避行.
道野辺清美 みちのべきよみ   元老院議長.江沼失脚には成功するが,書生らに辞職に追い込まれる.
美濃部龍作 みのべりゅうさく   元武士.商家の旦那.抜けているため,お吉に利用される.
雪谷織部 ゆきやおりべ   元旗本.お吉の父.登場しない.

掲載 090101/最終更新 100805

HOME >> 圓朝作品のあらすじ >> prev 黄薔薇 next