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月謡荻江一節   
−つきにうたうおぎえのひとふし−

 明治22年,やまと新聞に連載.初代,二代の荻江露友伝.四代目荻江露友は圓朝と親交があり,他の作品にも登場する.三代目までの実伝は伝わっておらず,圓朝の創作.初代露友の誕生は筋立てがすっきりしているが,その後は,主人公が半次郎とお民に移り,焦点がぼやけた感じ.

 大あらすじ
 縁談のもつれから同僚に憎まれた森庄五郎は,ついに侍を捨て荻江露友となる.入江玄龍と山村半次郎の確執の末,両家は絶える.残った東寿を露友が引き取り二代目に.
 侍から芸人に
 寛延2(1749)年9月,津軽藩の森庄五郎,洪水でおぼれるおかの親子を助ける−礼に来たおかのと結婚を約束/1752年,河野六郎,おかのと福永忠之丞の縁談を持ってくるが,おかの断る−六郎,これを恨み,殿の前で森に長唄をうたわせる.続いて,忠之丞と立合を強要−かの,忠之丞を打ち,福永の負けに終わる/池辺を巻き込み,忠之丞,森を錦糸堀で斬ろうとするが,通りあわせた旗本の山村半左衛門が助ける/1753年,菅野紋次郎,森を誘って一中節を聴きに−森,酩酊.都一浜を忍ばせて不義者の咎で放逐しようとたくらむが,一浜が応じない.菅野,今度は医者の入江玄龍が用立てた毒酒をすすめるが,一浜これを捨てる/池辺は毒殺される.森,池辺の最期の言葉から身の危険を知る−そこで,森,わざと放埒.おかの心配で病に−よんどころなく森,夜分に見舞う.河野それを見つけてとがめるが,娘のおかのが諭す−1754年,頼まれて市村座に出演−これを咎に追放−荻江露友として芸人になる
猿若町の市村座跡
 運命の転変
 菅野が間に入り,一旦忠之丞と縁談が決まるが,おかの発狂/忠之丞,入江の娘お清と結婚.おかの,狂人のふりをやめ福山藩屋敷に奉公.野川となる/露友と富士田吉次が共演.中老野川,2人を呼ぶ−吉次を先に帰し,二人で話−吉次,一浜と文蔵を取り持とうとするが,一浜断る−怒った文蔵らが露友を襲うが,野川が割ってはいる/入江の娘お民,半次郎と結婚.東寿郎を出産−半次郎,義父の入江玄龍を訪れ,お民の産後見舞を頼む−お民,半次郎とお清の密通を暴く−お民の密通を気取った忠之丞,逆上して入江の留守宅へ乗り込む.半次郎,二階から脱出.下女のお滝とお清を殺す.そこへ玄龍が戻り,池辺毒殺などの犯罪を内聞にするからと50両を取る.半次郎,忠之丞の犯罪のありさまを隠れて聞いていた−半次郎,勘当.お民と東寿郎は入江方へ−半次郎,御家人の横須賀周作に厄介になるが,金の切れ目が縁の切れ目,遂にお民を連れ出す−横須賀,入江に金を無心に行くが,逆に持ち出した金などを返させられる.半次郎,母に金を借りてしのいでいたが,兄も母も続いて死亡.金づるがなくなり,遂に遊び人に−玄龍を殺し,金を奪う−半次郎,逐電/腹違いの姉に縁切りの金をめぐまれる−とうとうお民,乞食になる−旧家来の弥助に会って,親子ともども下総塚前村へ
塚前神明社
 二代目荻江露友
 半次郎,信州薮原でお絹と結ばれ,深川へ−半次郎,忠之丞に会い,毒殺ネタに50両無心−弥助に会い,再び江戸へ来たお民と再会/半次郎,にわか雨に遭い,そば屋へ駆け込む.中村仲蔵,これを定九郎の趣向に使う−半次郎,橋番の娘(菅野の娘),お秋を犯す/露友,お秋に会い,娘(半次郎の子)を菊と名付ける.子守する東寿郎に会い,父は処刑,母は死亡と聞く−弥助に話し,東寿郎をもらい受ける−荻江東寿に/お菊,東寿に恋がれ死に−東寿,お菊が妹だと知る−東寿,後に二代目荻江露友に
荻江露友(4)
近江屋喜左衛門墓

 はなしの足あと
 
 ほとんど江戸市中で噺が進む.地方は1ページほどしか出てこない.亀戸あたりが主な舞台.1)荻江露友になる前の森庄五郎,2)敵役の福永忠之丞,3)入江玄龍が襲われる道中が出てくる.

 はなしの人びと
あき (1745-) 半次郎に犯され菊を生む.のち秋月尼.
池辺小藤太 いけのべことうだ (-1753.03) 森の友人.森を殺す約束をたがえたため毒殺される.
入江玄龍 いりえげんりゅう (1707-) 町医.もと惣左衛門といった武士.
笠原主膳 かさはらしゅぜん   津軽公の重臣.
上総屋文蔵 かずさやぶんぞう   元締.
かの かの (1737-1814) 森の許婚者.のち中老野川となる.
きく (1767-1783.03.21) 東寿郎に恋がれ死ぬ.
きぬ (1740-) 半次郎の妻.芸者あがり.
河野六郎 こうのろくろう   かのの父.
こと   横須賀周作の妻.
菅野紋次郎 すげのもんじろう (-1755くらい) お秋の父.入江に殺される.
すみ すみ (1710-) 河野六郎の妻.
せい (-1761.01.21) 入江の娘.半次郎と密通し中之丞に殺される.
たき (-1761.01.21) 入江の使用人.中之丞に斬られる.
たね (1681-) 森の祖母.
たみ   入江の次女.後半の主人公.
津軽岩松信寧 つがるいわまつのぶやす [1737-1784] 津軽公.森庄五郎の主人.
伝蔵 でんぞう (-1752.09.13) 森家の使用人.忠之丞に斬られる.
東寿郎 とうじゅろう (1761.01.01-) お民,半次郎の息子.2代目露友.
中村仲蔵 なかむらなかぞう (1737-) 初代.定九郎の入れ事.
福永忠太夫 ふくながちゅうだゆう   大和公の重臣.
福永忠之丞 ふくながちゅうのじょう (1727-) 森の敵役.忠太夫の息子.
富士田吉次 ふじたきちじ [-1771] 元,役者で佐野川専蔵.一中節に転じ都和中(2),長唄に転じ富士田吉次(1).
都一浜 みやこいちはま (1734-) 都和中の娘.
森庄五郎 もりしょうごろう (1727-) 初代荻江露友.
弥助 やすけ (1713-1777.10.15) 山村の使用人.お民を救う重要人物.
山村半左衛門 やまむらはんざえもん   半次郎の父.森の窮地を救う.
山村半次郎 やまむらはんじろう (1736-) 後半の主人公.
山村半助 やまむらはんすけ (-1761) 半次郎の兄.病身.
横須賀周作 よこすかしゅうさく   御家人.半次郎が居候する.
菅野紋次郎の妻   (-1766.07.21) 橋番.半次郎に斬られる.

掲載 090101/最終更新 100805

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