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緑林門松竹   
−みどりのはやしかどのまつたけ−

 圓朝初期の作品.別名「忍岡義賊の隠家」.芝居噺として演じられたという.後にやまと新聞に連載.年齢や年代などの記述はなく,地名についても明確でない.悪党の痛快な活躍を楽しむ大活劇.それにしても次々と登場人物が死んでいく.剣術師天城殺しまでが面白い.彦六の正蔵らにより,新助市殺し,またかのお関など数席が演じられている.圓朝全集にない,やんま久次の件も速記になっている.

 大あらすじ
 新助市,お関,按摩の幸治と,次々と悪人が出てきては盗みを繰り返す痛快編.
 新助市 譽石を奪う
 新助,七軒町の医者,秀英のお供.毒薬の在りかを聞き出す−秀英の妻に一つ目の妾宅のことを話し,毒薬譽石を出させる.妻を殺害−妻が間男していると偽り,秀英を連れ出して毒殺−妾のおすわ口説き.下女のお定殺す.捜索の手が入り両人逃亡する/新助の茶店に周伯堂親子が訪れる−周伯堂を毒殺−お時を吉原へ売る.お時は常磐木となる−留守中,おすわは息子の新太郎に仇討を吹きこむ−しかし,新太郎とおすわは新助に返り討ちにあう−再び手入れ
一つ目の橋
 またかのお関
 剣術使いの天城豪右衛門,常磐木に振られ通し,腹いせに身請けを計画−まぶの惣次郎と心中まで計画.平吉見かねて250両の証文を渡す−惣次郎,下谷の女占い者,実はまたかのお関の二つ名の悪女を尋ねる.まんまと美人局にあい証文取られる−平吉,証文を取り返しに行く.旧知のお関といい仲に−按摩に化けた元夫の新助が訪ねてくる−お関,毒薬を奪い,酒に入れて新助を毒殺.60両奪う
上野広小路
 平吉 天城に乗り込む
 平吉,天城の道場に乗り込む.惣次郎が天城より先に身請けすると断りに行くが,半死半生の目にあう−惣次郎の許婚者,おくみが病気になるが,惣次郎それを放置−吉原土手で平吉,天城と誤り惣次郎の父である惣右衛門を殺す.惣次郎をおくみに会わせるよう遺言.お関,旗本後家に化け,天城の道場に息子の弟子入りを願う−色仕掛けで酔わせて天城と門弟を毒殺−常磐木を身請け
吉原土手 中江
 田舎の惨劇
 平蔵親子,いたたまれず常陸の大宝へ.途中ごまの灰にあう−娘のお久,ほうそ村の治右衛門の挽き割りを盗み縛られる−平蔵,死のうとするところをお関が助ける−治右衛門夫婦を殺し,金奪う.お久は平蔵の所へ戻る−平蔵,平吉に惣次郎が受牢したことを伝える−平吉,お関とって返すが,農民に平吉つかまり瀕死の状態−お関,白滝で修行した俄修業者になり,山の垢と称して譽石を飲ませる.村人次々と死亡
筑波の白滝
 按摩幸治
 清三郎,伯父甚蔵におなつと縁談の取り持ちを頼む.おなつの兄の花蔭,承知−お島,女中のおさきと湯に−おさき,お島がなくした簪をおなつの衣類から見つけ,泥棒呼ばわり−これは,おなつに懸想した番頭藤七が,おさきに頼んで仕組んだこと−按摩幸治,それを見破り金の無心−藤七,幸治に茶入れと交換で,おさきの始末を相談−隣室でお関が立ち聞き,藤七らを利用する計画−藤七,店の金を持ち出したおさきを酔わせ,130両を奪って殺す.お関,藤七を殺す/おなつ家出−花蔭ら,おさきと藤七の悪事を知る−おなつは吾妻橋で身投げしたが,助けた男に監禁される.道灌山でようやく逃げだす.これを幸治が助ける−藤七から幸治に渡った茶入れが花蔭に戻り,帰参かなう−お関と平治,自首.服毒自殺.幸治,佃島徒刑後坊主に.惣次郎とおくみ,清三郎とおなつ結婚.常磐木地蔵建立
道灌丘之碑

 はなしの足あと
 おおよそ5つのストーリーからなる.発端は根津七軒町(台東区池之端)の医者宅と本所一つ目(墨田区)の妾宅とを往復しながら殺人を繰り返す場面.続いて,下谷車坂(台東区上野)で占い者の看板を上げているお関を訪ねる阿波屋のせがれと小僧平吉,またかのお関の一席.三輪(台東区三ノ輪)の道場にお関が女隠居に化けて,天城らを毒殺する場面.平吉の親父が故郷の大宝手前のほうそ村(茨城県)で村人に折檻され,お関平吉が仕返しをする場面.広徳寺前(台東区)の商家の番頭をだまし,しまいには悪人は捕縛という結末部.
 はなしの人びと
天城豪右衛門 あまぎごうえもん 剣術師.常盤木を張り合う.お関に毒殺される.
阿波屋惣右衛門 あわやそうえもん 惣次郎の父.平吉に誤って刺される.
愚図金 ぐずきん お関の食客.
くみ くみ 惣次郎の許婚者.
幸治 こうじ 按摩の幸治.お関の仲間.実は目が見える.
甚蔵 じんぞう 小梅に住む清三郎の伯父.
さき さき 上総屋の中働き.おなつに濡衣きせる.
しま 上総屋の女房.
治右衛門 じえもん ほうそ村の農家.平吉に殺される.
周伯堂 しゅうはくどう 手習いの師匠.新助市に毒殺される.
新助市 しんすけいち 新助と称し山木から譽石の毒薬奪う.本名市五郎.お関に毒殺される.前半の主人公.
新太郎 しんたろう 山木,すわの子.新助市に殺される.
すわ すわ 山木の妾.元柳橋の芸者.新助に殺される.
清三郎 せいさぶろう 鼈甲屋上総屋の子.
せき またかのお関.中盤からの主人公.
惣次郎 そうじろう 菓子屋阿波屋の子.常盤木を身請けする.
藤三郎 とうざぶろう 天城の内弟子.お関に毒殺される.
藤七 とうしち 上総屋の番頭.
とき 周伯堂の娘.松葉屋に売られて常盤木.
なつ なつ 清三郎の許婚者.濡衣で逐電する.
禿虎 はげとら お関の食客.天城に乗り込む時は金十郎の偽名.お関は横田織部の隠居名を名のる.
花蔭左五郎 はなかげさごろう おなつの兄.
平吉 へいきち すり.小僧平吉.中盤の主人公.
平蔵 へいぞう 平吉の父.平吉の罪を苦に田舎へ.
山木秀永 やまきしゅうえい 医者.新助に毒薬奪われ,毒殺される.

掲載 090101/最終更新 140801

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