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名人くらべ   
−めいじんくらべ−

 フランスの作家,サルドゥの「ラ・トスカ」の翻案で,プッチーニのオペラ化に先立つ明治24年の新聞連載.原作の政治犯を匿う設定は,大塩平八郎の乱に置き換えている.本題のほかにも,3代目荻江露友誕生のサブストーリーや,能楽師や絵師などの名人伝が入れ事として散りばめられている.文晁が富士を描くエピソードは「谷文晁の伝」にも使われている.志ん生(5)が荻江のところを除いた,須賀と毬信のストーリーを演じている.

 大あらすじ
 荻江露友の弟子,伊三郎はついに芸の妙所を感得する.踊りの須賀に絵を酷評された毬信は猛然と修業し,須賀と夫婦になる.大塩の乱の残党を匿った毬信は殺され,仕返しに須賀は与力を殺す.
 多摩川の鮎取り
 文化年間,深川の豪商,近江屋の一行が多摩川へ鮎取り.帰りに元深川芸者の大春に会い,美声の少年,伊三郎を貰いうける
調布 多摩川
 須賀と毬信
 修業の身でありながら伊三郎が荻江の節付けをしたことを,師匠の露友が怒る/毬信,自分の絵がお須賀の踊りに劣るのを残念と思い,須賀と結婚して技芸を磨く希望.金八が須賀のところへ交渉に行くが,毬信の描いた静御前の左手が拙いと墨で塗り,これを渡す−それを見た毬信,発奮して上方で6年間修業
静御前墓
 荻江の奥義
 伊三郎,小美代といい仲−露友の娘,お又病気になる.小美代に縁談.伊三郎も病気のお又のために手切れを決意−伊豆にひきこもった露友宅を探しあて,中をのぞく.お又の病がつのり,露友,荻江節の妙所を披露する.これを聴いた伊三郎,芸の奥義を体得する−3代目荻江露友を襲名へ
伊豆吉浜
 トスカ第1幕
 1836年,毬信,静御前を描き上げ帰京−須賀と結婚−1837年,南泉寺に籠もり,天人を描く−大塩の乱の残党の宮脇数馬,捕り方を逃れ,南泉寺に隠れている−芸者小菊の扮装をさせ,毬信方へ逃がす−捕り方踏み込む.数馬の妹の小菊の扇子と男物の服を見つける/同心の石子と金谷,須賀に小菊の扇子を見せ,妬かせる−須賀,根津の毬信宅へ
宮脇志摩墓
 トスカ第2幕
 押し問答の末,毬信,数馬をかばい小菊と会ったと認める.なおも詰問する須賀を斬ろうとする−数馬出てきて訳を話す−捕り方と石子ら家捜し.数馬切腹−毬信捕らえられ,金谷取り調べ.金谷,須賀を自分のものにしようとする−夫の助命のために,とうとう身を任せ,証拠に正宗の短刀を受ける−毬信獄死−正宗,まったくの偽物と知れる−金谷を泥酔させ刺殺−須賀,南泉寺で自害
南泉寺松林伯圓墓

 はなしの足あと
 多摩川の鮎漁は今の調布市付近.荻江露友宅が扇町(江東区木場),旦那が北川町(江東区永代),須賀の家が霊岸島川口町(中央区新川).福浦(湯河原町)に逼塞した師の荻江露友を訪ねる場面は,福浦近辺が詳しい.大塩の乱の残党,宮脇は道灌山辺を逃げ,南泉寺(荒川区西日暮里)にかくまわれる.お須賀は,根岸(台東区)から南泉寺を訪ねる.
 はなしの人びと
吾妻屋金八 あづまやきんぱち   小間物屋.鮎漁.
石子伴作 いしこばんさく   町奉行目付同心.
近江屋喜左衛門 おうみやきざえもん   深川の豪商.毬信らのパトロン.
大春 おおはる   元深川の芸者.伊三の祖母.
荻江伊三郎 おぎえいさぶろう   幼名伊三.3代目露友許される.
荻江露友 おぎえろゆう [1770か-] 荻江露友(2).伊豆に逼塞.
金谷東太郎 かなやとうたろう (1793-1837) 岡崎町,与力.
狩野毬信 かのまりのぶ (-1837) 絵師.宮脇数馬を匿い獄死.義山信操居士.
小菊 こぎく   深川の芸者.宮脇数馬の妹.
小春 こはる   伊三郎の母.死亡.
小美代 こみよ   深川の芸者.
周信 ちかのぶ [1660-1728] 狩野周信.毬信の師.如川.登場しない.
坂東須賀 ばんどうすが (-1837) 霊岸島,踊りの師.毬信と結婚.自害.貞山美操信女.
また   露友(2)の娘.
宮脇数馬 みやわきかずま (-1837.09.03) 志摩の子.毬信に匿われるが自害.
宮脇志摩 みやわきしま   神官.大塩の乱に荷担.死亡.

掲載 090101/最終更新 100805

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