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恋路の闇   
−こいじのやみ−

 『江戸落語便利帳』に載せられた人情噺の梗概の中に「恋路の闇」と題する圓朝作品がある.圓朝没後の大正元年に出版されていることから,圓朝作でない可能性が示唆されている.ここでは,圓朝の生前,明治30年に出版された『扇拍子』に収められた初代圓右演のあらすじを紹介する.雑誌『華の江戸』に連載された「五月闇」がもともとの速記.なお,圓朝の速記は未見だが,両書とも速記者,収録演目は同じである.文体は「鶴殺疾刃庖刀」に似ており,圓朝のものではなさそう.病床で圓朝を襲名し,噺を演じることなく亡くなった圓右のことを『恋路の闇』の出版社が(二代目)圓朝と記したのではないかと思われる.

 大あらすじ
 嫉妬深い三蔵は,妻のおようと間違って娘と姉を殺す.それでもおようをあきらめきれず三蔵は破滅して行く.
 とりかえばや姉妹
 明治期.金満家の芳野与作は,名古屋に仲居として勤めていた時の馴染みおそうを静岡に訪ねる−姉のおそうは,おようの夫の三蔵の金策を種におようとの仲を取り持つ約束−およう,断る.やむなくおそうが芳野の相手−芳野,おそうを囲う/おようが芳野と名古屋へ行ったと知った三蔵,嫉妬に狂い,芳野を襲う−誤っておそうとおようの連れ子の磯を殺す−三蔵,逃亡
静岡教導石
 窮鼠猫を噛む
 三蔵,旧知の富田源蔵を頼る.妻のお秀は,清次郎に寝取られて横須賀にいるという.富田源蔵,東京へ身を隠せと説諭,三蔵に路銀与える−船中,侍信に身元を暴かれ,やむなく盗賊の相棒となる−押し入った先は偶然にも清次郎宅.100円せしめ,お秀も侍信のもとへ−盗みの報酬はたった1円と言われ,三蔵逆上−侍信が乗るはずの渡船に先回りしてこれを殺害.お秀と東京へ
横須賀港 軍艦三笠
 VDとDV
 東京で路銀を使い果たしても三蔵はおようを探し続ける−お秀,奉公先で,軍人の妾となったおように会う.身分が違い過ぎて,三蔵はおように近づけない−お秀,貧乏のあまり売春させられる.とうとう性病で顔に腫物−三蔵,そんなお秀を蹴り殺す−お秀の旦那の軍人を追って神戸へ向かうが,金がないので徒歩.ようよう静岡に来て,兄の瀧三郎を訪ねる.ここで暴れて三蔵は捕縛
小田原橋

 はなしの足あと
 静岡,横須賀,東京新富町あたりが舞台になる.本編には取り上げていないので,新地名を列記すると,両替町,宮ヶ崎,安西,草深,草深の稲荷(以上静岡市葵区),広野(静岡市駿河区),大滝町(横須賀市大滝町),山下御門,小田原橋(以上中央区)など.昼から静岡−名古屋を往復してまだ宵の口という設定には無理を感じる.
 はなしの人びと
いそ ようの娘.10歳で三蔵に殺される.
侍信 さむらいしん 信次郎.もと番町の足軽.強盗などの凶状.三蔵をだまして殺される.
さわ 瀧三郎の妻.
三蔵 さんぞう ようの夫.もと船頭.嫉妬のあまり殺人.
清次郎 せいじろう 紙屋の倅.お秀と間男して逐電.
そう そう 姉.吉野の囲いもの.三蔵に殺される.
瀧三郎 たきさぶろう 三蔵の兄.
富田源蔵 とみたげんぞう 清水で瀬戸物会社経営.器量が大きい.
ひで もと源蔵の妻.間男して逐電.侍信とも関係.性病で死亡.
よう よう 妹.もと金波楼の仲居.子連れで三蔵と結婚.
芳野与作 よしのよさく 岐阜の金満家.三蔵に殺されかける.
軍人   ようを囲う.

掲載 090101/最終更新 140930

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