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八景隅田川   
−はっけいすみだがわ−

 明治25年,圓朝の名でやまと新聞に連載されたが,実は社長で戯作家でもある條野採菊の作という.水戸路,駒木の諏訪,行徳など旅の部分は面白い.しかし,2軒の大坂屋が登場し,どちらの店にも久兵衛が勤めており,別に久助が2人出てくるなど,練り込みが不足している.明治になって仇討ができず,捕縛で跋となるのも拍子抜け.

 大あらすじ
 重三郎に犯された秋は,その男に恋し,後を追う.重三郎と組んで秋は悪事を重ねる.とうとう謀殺した年雄の息子に見つかり,捕縛される.
 真崎の月
 幕末期.橋場に疎開した島田清左衛門を殿様風の一行が訪ねる−島田もてなすが,夜分に3000両奪われた上,娘の秋が犯される/秋,気鬱.殿様に恋わずらい−乳母の雪,情夫の白須から,例の殿様は流山在の重三郎だと聞く−秋を連れ出し,野田へ−葛飾新宿で白須,秋を涸れ井戸に投げ込む−驚いた雪,立ち向かうが殺される−秋,5日後に救出−順礼となり重三郎を探しに仙台へ向かう−途中,商人に化けた賊の1人に会う.秋が重三郎の命を狙っていると考え,秋の殺害を計画−水戸近くで連れのお光を殺すが,秋は川へ落ちて生き延びる−辻堂で図らずも重三郎に出会う
水戸街道竹原宿
 白髭の暮雪
 維新後.質両替商の年雄ら向島の別荘へ雪見−酒宴中,門付けの瞽女をあげ,薗八節などを聴く−感心した年雄,母の見舞いにと,久助を連れて瞽女の家へ向かう−秋葉社で瞽女,年雄を刺す.門付けは実は秋,久助は実は重三郎だった−医者が手を尽くすが年雄死亡.医者の話で仇が重三郎と知れる−息子の源之助,13歳ながら仇討決意
向島白髭神社
 待乳山の夜の雨
 大坂屋の若旦那清之助,寄合で芸者のろくに会う−島田の娘であることから馴染みとなる−駒木の諏訪社へともに参詣−宿屋に賊が入り,金奪われる.ろくも連れ去られる−ろくは実は秋.賊は重三郎/源之助,千葉周作のもとで剣術修行−母と行徳の徳願寺に参詣,帰りに弘法寺の石段で重三郎らとすれ違う−面影より,あの久助だと気づく−官軍を頼んで捜索するが,発見できず/仁太郎,清之助の店に現れ,ろくが巻き添えになって賊に襲われたことをネタに50両強請り取る−ろくこと秋,強請がうまくいったお礼参りの待乳山聖天で,偶然と重三郎らと出会う−斬り合いとなる−官軍が入り賊は召し捕り.重三郎と秋処罰
真間弘法寺の石段

 はなしの足あと
 3章からなる作品.最初は真崎(荒川区南千住)の寮で話がはじまり,木賀崎の小僧弁天での殺人,小幡での殺人未遂が描かれる.水戸までの道中が詳しく,水戸街道が描かれる圓朝ものはこれのみ.小僧弁天が新宿(葛飾区新宿)にあるとしてあるが,実際には松戸の戸ヶ崎の近くにあるので,このあたりが矛盾点と言える.第2章は,白髭そばの別荘と須崎までのわずかな道のりで殺人が起きる.第3章は駒木の諏訪さま(流山市)への参詣の場面,行徳,真間,国府台の遊山が出てくる.千住大橋を渡って駒木に向かっているので,埼玉県側から江戸川を渡って流山に入ったらしい.結末は待乳山聖天(台東区浅草)での仇討.
 はなしの人びと
大坂屋五郎右衛門 おおさかやごろうえもん 八丁堀の材木問屋.清之助の父.
大原重三郎 おおはらじゅうざぶろう 元堀田家の家来.お秋を犯す.秋らと悪事.
大原重太夫 おおはらじゅうだゆう 重三郎の父.自害.登場しない.
久助 きゅうすけ 年雄の別荘の下男.実は大原重太夫.
久助 きゅうすけ 箱屋.駒木の諏訪で襲われる.
きわ きわ 年雄の妻.
源之助 げんのすけ 年雄の子.13歳.親の敵討決意.
小雀伝次 こすずめでんじ 重三郎の子分.お秋ら襲う.
左吉 さきち お光の情夫.お光の夫を殺し自殺.登場しない.
島田清左衛門 しまだせいざえもん 橋場で大原重三郎に金を奪われる.お秋の父.
白須権太夫 しらすごんだゆう 重役の子.お雪を殺す.
清之助 せいのすけ 大坂屋の子.駒木の諏訪で大原らに襲われる.
月の輪熊 つきのわくま 石岡のならず者.お秋ら襲う.
出羽の専蔵 でわのせんぞう 石岡のならず者.お秋ら襲い,お光殺す.
年雄 としお 大阪屋.質両替商.お秋に刺され40歳で死亡.
仁太郎 にたろう 植木屋.賭博打ち.
真壁の吉六 まかべのきちろく 飛脚.お秋ら襲う.
みつ 髪結.順礼.出羽の専蔵に殺される.
ゆき 島田の下女.白須の愛人.白須に殺される.

掲載 090101/最終更新 100805

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