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粟田口霑笛竹   
−あわだぐちしめすふえたけ−

 明治21年の出版.はじめ三題噺として作られたという.それ以前に,山々亭有人(条野採菊)補綴の人情本「花菖蒲澤の紫」,合巻「今朝春三組盃」として世に出ており,太平書屋から復刻されている.形式も内容も圓朝の人情噺とは大きく違っている.盗まれた銘刀粟田口の行方探しと,一節切(ひとよぎり)笛の名手稲垣小左衛門の仇討という古典的な題材.しのと伊兵衛のかけあいや位牌と婚礼の場面など,若草がらみのところは面白い.

 大あらすじ
 重三郎と小左衛門は盗まれたお家の宝,粟田口の詮議.伊之助は2人の娘の愛憎により脱疽を患う.
 粟田口の盗難
 寛保3(1743)年,鋏鍛冶の金重の娘,お富,伊之助を見かけて恋心−鋏鍛冶の金重死ぬ−伊之助が吉原松葉屋の八重花に入れあげときき,親の石塔代を名目に松葉屋へ身売り.お富は若草と名を改める/刀屋岡本正七の番頭重三郎,侍に襲われ,金森家から預かった粟田口国綱を奪われる−船頭荷足りの仙太,重三郎を助ける−重三郎,再び首をくくろうとするところを仙太助ける.岡本では重三郎は自殺したと思う−侍の顔を見た駕籠屋に出くわす/刀係の稲垣小左衛門,事情を聞き,罪を負う覚悟/お雪ら,川崎大師の行きがけ,羽田に住む重三郎の父の重助を訪れ慰める.お雪,駕籠屋に連れ去られる−重助の戸口に一節切を吹く修行者.実は稲垣.お雪を助け出してくれる
羽田玉川弁天
 若草の呪い
 若草の突き出し日より伊之助通い詰め,店の金を使い込む−伊之助ら,吉原で侍にからまれる.仙太が割ってはいる−翌日,土手で再び侍に襲われ,長次死亡−伊之助,堀切の別荘へ押し込められ,次第に病気.許婚者のお雪を看病に頼む−妊娠した若草,叔母のおしのを頼んで堀切に掛け合いに行く.番頭の伊兵衛に追い返される−若草患いつく.見舞いの客,伊之助を雪がむつまじく看病しているとうっかり喋る−若草,夜中に伊之助を呪詛
堀切菖蒲園
 国府台に響く笛の音
 刀が見つからないため追放された稲垣,真間で商売をはじめる.安売りゆえ他の商家が迷惑−浪人の荻原束,掛け合いに行くが逆に鉄砲で脅される/呪いを受けた伊之助,足が腫れて脱疽となる−正孝,伊之助に若草と赤子が死んだことを知らせる.叔母のおしの,引き続き呪う−安兵衛ら,矢切村へ行ってしのに掛け合うが,今度は安兵衛らが追い返される/稲垣と丈助,国府台見物.かどわかされたみゑを助ける.みゑは倅小三郎の許婚者−稲垣,崖で笛を吹く.大野惣兵衛に突き落とされ死亡.実は丈助が共謀していた.笛と犯人の頭巾を握った死体を仙太郎と重三郎が発見
国府台石棺
 位牌と婚礼
 みゑ,乳母のおしのを訪ねる−丈助,母のおしのを騙し,200両で刀が探せるという小三郎の偽手紙を見せる.みゑ,山口屋へ身売り−丈助,矢切の渡しで勇助を殺害−お富の法事をあげ,お富の位牌と婚礼すること条件に,おしのの怒りがゆるむ−政七,その意をくみ,わざと悪態をつき,雪を離縁させる−位牌と婚礼.怪異いろいろ.次第に脚が快方に向かう
矢切の渡し
 自殺の名所枕橋
 雪,離縁されたことを苦に枕橋から身投げ.重三郎,首くくり.両名を仙太郎助ける−重助,順礼となり回国.荻原に斬られるところを,仙太の女房のお梶に救われる−重助が雪を救ったことにして政七にわび入れ−その晩,政七宅へ賊が押し込み.仙太郎,賊の荻原と船頭喜代松を捕らえる.2人は死罪
枕橋
 粟田口の奪還
 成田山の参詣帰り,原文らに襲われた伊之助を小三郎が助ける.拝領の蘆屋の釜を譲り受ける/小三郎,偶然重助宅で父の死を知る.頭巾の印より仇が大野だと知れる/小三郎,仇討に出立するが,眼病/みゑ改め音羽のもとへ,八橋周馬(大野の偽名)が通うが,振られ通し−大野に突き当たった小三郎が斬られようとしたところ,美恵比丘尼が割ってはいる−小三郎,盲人の悔しさに自殺を図るが,隣室の美恵に見破られる−政吉の世話で深川住まい/丈助,小三郎が百両必要だと音羽をだます.音羽,丈助に盲人の客を殺して金を奪うよう依頼−盲人が小三郎と知り,音羽,廓抜け.小三郎,丈助に肩を斬られる−小三郎,悪血が抜けて快方.おしのに丈助の悪事を伝える−おしのを訪ねた丈助,おしのに殺される.死に際,大野の居所を教える/大野,粟田口を売ろうとする−総動員で大野を討つ
成田山新勝寺

 はなしの足あと
 名刀粟田口が盗まれるのが佐賀町河岸(江東区佐賀).自殺が相次ぐのが枕橋(墨田区),占い者美恵比丘尼の庵室が白髭(墨田区)にある.位牌と婚礼は堀切(葛飾区堀切)の寮.羽田(大田区羽田)が寒風吹きすさぶ辺地,矢切(松戸市)が偏狭な田舎ものが住む土地に描かれている.稲垣が殺される真間国府台(市川市)の名所が詳しく,成田詣での道中が多少出てくる.
 はなしの人びと
石川藤左衛門 いしかわとうざえもん (-1743.11.03) みゑの父.日暮里で大野に撃たれて死亡.
稲垣小左衛門 いながきこざえもん (1696-1744.02) 金森家重役.粟田口紛失で浪人.真間で荒物屋稲垣屋小助.国府台で大野に殺される.
稲垣小三郎 いながきこさぶろう (1721-) 小左衛門の子.粟田口詮議.一時盲になるも丈助に肩を斬られ回復.大野討つ.
伊兵衛 いへえ   紀伊国屋手代(番頭).堀切で伊之助見張る.
大野惣兵衛 おおのそうべえ (1709頃-1746) 元金森家家臣.多数を殺人.八橋周馬の偽名.小三郎に討たれる.
岡本政七 おかもとまさしち   深川万年町の道具屋.粟田口紛失.
かじ   荷足の仙太の女房.
金重 かねしげ (1679-1743) 湯島切通し.鋏鍛冶.お富の父.
恭太郎 きょうたろう   金重の弟子.金重死後は,しのの許.愚か者だが肝心の場面を目撃.
喜代松 きよまつ   矢切の船頭.岡本政七宅へ強盗,捕縛.死刑.
しの しの (1714-) 矢切村.お富の叔母.一刻者.
重三郎 じゅうざぶろう   岡本政七の番頭.刀の詮議に出る.
重助 じゅうすけ (1679頃-) 羽田村の梨売り.重三郎の父.回国.
丈助 じょうすけ (1704-1746) 小三郎の家来.大野の手先.しのの子.しのに殺される.
清助 せいすけ (-1744.02) 真間の百姓.総寧寺案内.大野に殺される.
宗十郎 そうじゅうろう   紀伊国屋主人.伊之助の父.
長次 ちょうじ (1711頃-1743.09.20) 本郷春木町.回り髪結.大野に斬らる.
とみ (1726-1744.02) 松葉屋で若草,伊之助の馴染み.伊之助呪う.出産後死亡.
荷足の仙太 にたりのせんた   伊皿子台町.窮地にたびたび現れる.粟田口詮議.
萩原束 はぎわらつかね   国分村浪人.岡本政七へ強盗,捕縛.死刑.
原文 はらぶん   駕籠屋.羽田でお雪をさらう.成田道で小三郎に斬られる.
みゑ みえ   石川藤左衛門の娘.小三郎の許婚者.さらわれるところを小左衛門に救われる.山口屋で音羽.
美恵 みえ (1691-) 白髭蟠龍軒の尼.
三島安 みしまやす   駕籠屋.羽田でお雪さらう.成田道で小三郎に斬られる.
安吉 やすきち   駕籠屋.寅の相棒.粟田口詮議.
安兵衛 やすべえ (1700-) 紀伊国屋番頭.
勇助 ゆうすけ (-1744) 石川の旧家来.丈助に殺される.
ゆき (1726-) 岡本政七の妹.伊之助の許婚者.

掲載 090101/最終更新 100805

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