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鶴殺疾刃庖刀   
−つるころしねたばのほうちょう−

 明治20年,圓朝の名でやまと新聞に連載.実際は條野採菊の作で,圓朝は演じたことがないという.登場人物は図の3倍もいるが,筋立ては単純.落語の世界には悪人は住んでいないという人がいる.人情噺には,後家安のような極悪人がいる.志ん生(5)が"後家安とその妹"と題して一部を演じている.

 大あらすじ
 側室お藤の方に丸め込まれた東城氏勝は,次々と失政を重ねていく.過ちに気づいたときは既に遅く,その身は切腹.お藤の兄の後家安も悪事の報いで殺害される.
 道頓堀の出会い
 弘化元(1844)年,東城左近大夫氏勝,お国詰につき大坂住吉社の参詣帰り,道頓堀に陣笠を落とす.これを芸者のお藤が拾う−お藤を身請け.氏勝の妾に/お藤の兄の後家安,支度金の100両を手にし,小揚げの福蔵方に強引に居候−1845年,福蔵の妻のお亀を強姦−後家安を追い出せない福蔵に愛想がつき,後家安とお亀出奔
道頓堀の賑わい
 のさばるお藤の方
 お藤,氏勝に讒言して側室のお里を放逐.老女の久保田は反対する−お藤懐妊−ある日,突然神奈川の亀の甲煎餅を食べたいとねだる.馬で民弥が買いに出るが,帰参が遅いと不興−民弥,切腹しようとするが,久之丞のお家のためとの言葉で断念.謹慎−奥家老の岩見,藤を上通り扱いせよという氏勝の頼みを断り苦言を呈する.岩見追放−高橋伝次が奥家老に−お藤,氏勝をたきつけ,正室の綾子を下屋敷へ下げさせる
亀の甲煎餅
 後家安と常綺羅お釜
 後家安ら,御家人の田地見の所に食客−お亀,新宿へ身売り−田地見ら,旦那衆と偽り,上野の芸者常綺羅お釜に取り入る−芝居見物の留守に300両を奪う/1849年,氏勝,用人の横山典蔵に,跡目を東一郎から実子の新八郎に換えるよう頼む−東一郎,使者の横山を足蹴にする−逆上したとして猿江に幽閉される−民弥,屋敷を抜けだし岩見を訪ね,播州の主水正に直訴の相談−医者の周庵,はかりごとに気づき,後家安らに民弥殺害を依頼
猿江 明烏比翼塚
 宇都ノ谷峠の血煙
 後家安,民弥を追いかけ東海道を下る.民弥,宇津ノ谷山中で田地見と加勢の連中を斬るが,後家安は逃げる−主水正に直訴かなう−主水正,氏勝へ戒めの手紙を出す−周庵,東一郎を毒入り菓子で殺そうとするが,毒味が必須と追い返す−民弥の母らを召し捕り,拷問−民弥戻り,留守の理由は寺詣りと言訳.謹慎処分を受ける
宇都ノ谷峠
 鶴を射殺す
 1850年,氏勝,禁制の鶴を射殺す.伝次これを鴻といいくるめる−公儀の密偵らしき女が突然宿下がり.氏勝,夢から覚めたように改心−民弥,綾子,東一郎を召し返し/福蔵,後家安を鈴ヶ森で不意打ち/公儀の詰問書が届く−氏勝,遺言したため切腹−氏勝を病死とし,岩見が詰問書に回答.横山,切腹.お藤と周庵は門前払い
鈴ヶ森処刑台石
 はなしの足あと
 発端は大坂道頓堀,住吉社の様子が詳しい.後家安は居候先の小揚(台東区蔵前)の福蔵の女房を寝取り,付木店(文京区本郷)へ移って悪事を重ねる.明神下(千代田区外神田)や御数寄屋町(台東区上野)の犯罪が出てくるが,噺の本筋ではない.その後家安も,鈴ヶ森(品川区南大井)で年貢を納める.今はなき亀の甲煎餅(横浜市神奈川)へ向かう道中と,民弥を後家安が宇都ノ谷峠までつけねらう道中が出てくる.

 はなしの人びと
綾子 あやこ   氏勝の正室.お藤に退けらる.
岩見雄蔵 いわみゆうぞう   奥家老.一時退く.奉行に申し開き.
大野周庵 おおのしゅうあん   町医.藤江の親元.東一郎毒殺謀る.
小笠原安次郎 おがさわらやすじろう (-1850.03) 元御家人.お藤の兄.後家安.
かま   下谷の芸者.後家安らに騙られる.
かめ   福蔵の妻.元遊女で瀬山.後家安に強姦される.
久保田 くぼた   氏勝の老女.
熊吉 くまきち (-1849.11.19) 臥烟.民弥に斬らる.
小揚の福蔵 こあげのふくぞう   賭博打ち.後家安が居候.後家安を殺す.
さと   東城の妾.
三太 さんた (-1849.11.19) 臥烟.民弥に斬らる.
新八郎 しんぱちろう (1848-) 東城と藤の子.
高橋伝次 たかはしでんじ   御馬役,後に奥家老.
田地見多次郎 たじみたじろう   御家人.後家安らが居候.民弥に斬らる.
東一郎 とういちろう   氏勝の兄の子.
東城左近大夫氏勝 とうじょうさこんのたゆううじかつ (1810または1814-1850.04.04) 仮名.河内の殿様.お藤に迷い失政,自殺.
藤江 ふじえ   踊りの師匠.東城の側室でお藤.
三上久之丞 みかみひさのじょう   近習見習い.民弥の友人.
主水正 もんどのしょう   東城の兄.播州.騒動解決に乗り出す.
由良民弥 ゆらたみや   近習.主水正に直訴.
横山典蔵 よこやまてんぞう (1809-1850.04.25) 東城家用人.

掲載 090101/最終更新 100805

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