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怪談乳房榎   
−かいだんちぶさえのき−

 圓朝の傑作.新聞連載後,明治21年に出版.柳島の蚊帳,早稲田の料理屋の二階,落合の蛍狩り,新宿十二社の滝,板橋赤塚村の乳房榎と場面のメリハリが効いている.仇討の場面も重信の幽霊の力添えがあり,最後まで怪異が貫かれている.圓生(5)は,歌舞伎座で重信殺しを演じた.原作にない蟒三次を配した早変わりと本水を使った立ち回りの涼しさを誘う夏狂言でも知られる.

 大あらすじ
 磯貝浪江,師匠である菱川重信の女房を寝取った上,殺害.女房は乳にできた腫瘍を治そうと乳房榎にすがる.辛くも助かった子の真与太郎は,父の亡霊に助けられ,乳房榎で仇討.
 梅若忌の見染め
 宝暦2(1752)年1月1日,真与太郎誕生/3月15日,浪人の磯貝浪江,梅若詣の途中,小梅で地紙折りの竹六に会う.おきせを見かける−磯貝,竹六に絵師菱川重信の弟子入りの世話を頼む−17日,弟子入り/5月5日,万屋新兵衛ら,南蔵院の天井に龍の絵を注文−7日,正介同道で南蔵院へ赴く
梅若塚旧地
 おきせ口説き
 柳島の留守宅へ竹六と浪江が遊びに来る.酒飲んで竹六は帰る.浪江は空癪を起こして残り,おきせを口説く.断られると真与太郎に刃を向け情交/これが度重なり2人は馴染みになる
柳島妙見
 早稲田の料理屋
 6月6日,浪江,南蔵院を訪問−正介を馬場下の料理屋に誘い,酒を飲ませ,叔父甥の約束をする−すると突然,重信を殺したいと相談.正介は断るが,殺すと脅され,やむなく手伝う約束
早稲田馬場下
 落合の蛍狩り
 正介,重信を落合の蛍狩りに連れ出す−薮に隠れていた浪江が重信を斬る.正介もやむなく木刀で撲る−南蔵院に重信が襲われたと報告に戻ると,なぜか重信は寺にいるという−龍を描き上げると重信の姿がかき消える/竹六,きせの再婚をすすめる−きせ,浪江夫婦に
落合
 十二社の滝の亡霊
 1753年7月きせ妊娠−9月乳が上がる−20日,浪江,再び正介を脅し,真与太郎を殺せを命じる−やむなく真与太郎を新宿十二社の滝に投げ込むと,滝に重信の亡霊が現れ,真与太郎の養育と仇討を命じる−正介,新宿で泊まり合わせた万屋の女房にもらい乳−板橋赤塚村の姪を頼る.松月院の門番となり,ひそかに真与太郎を養育
十二社ナイアガラの滝
 赤塚村乳房榎
 1754年,万屋の女房,乳が出ず,夢のお告げに従い,赤塚村白山権現を訪ねる−乳房榎の霊験の噂が広まる/1756年6月,竹六松月院へ,正介と再会.おきせの子,死ぬ.きせの乳に腫物ができる−治療のため榎の乳をもらい帰宅−榎の乳をつけると一時回復するが,夢に重信の亡霊が現れ,なおいっそうの苦しみ−乳にたまった膿を抜くために浪江が小刀で突くが,誤って深く刺す.傷口より鳥が飛び出し,きせ死亡.浪江狂乱−竹六,見舞いに訪れる.そこで浪江,正介の居所を聞き出す−7月12日,正介,真与太郎に真実を告げる−浪江,赤塚に現れる−真与太郎に重信の亡霊が差し添え,錆び刀で浪江を討つ
四代目乳房榎
 はなしの足あと
 東京都区内の比較的広い範囲で話が進む.梅若詣りの見染め,柳島(いずれも墨田区)のおきせ口説き,南蔵院(豊島区高田)の怪異,馬場下の密談,落合の蛍狩り,十二社の滝の子捨て(いずれも新宿区),乳房榎のある赤塚村(板橋区赤塚)が主な舞台.十二社の滝あたりは,淀橋浄水場から高層ビル街へと移り変わりが激しいが,十二社温泉や熊野社が残っている.

 はなしの人びと
磯貝浪江 いそがいなみえ (1724-1756.07.12) おきせを口説く.師匠の重信を蛍狩りに乗じて殺す.真与太郎に仇討される.
きせ きせ (1729-1756.06または07.10) 重信の妻.磯貝と密通の末,再婚.乳房にできた腫物のせいで狂い死ぬ.
正介 しょうすけ (1702-) 重信の下男.重信殺しを手伝う.真与太郎を十二社の滝に捨てようとするが,その後赤塚で養育.
竹六 たけろく (1723頃-) 地紙折り.田原町在.赤塚で正助と再会.
菱川重信 ひしかわしげのぶ (1716-1752.06.06) 元秋本越中守家臣,真与島伊惣次.絵師.磯貝,正助に落合で殺される.亡霊となり真与太郎を救う.
真与太郎 まよたろう (1752.01.01-) 重信の子.幼少にして磯貝を討つ.
万屋新兵衛 よろずやしんべえ   小石川原町在.南蔵院の絵を重信に依頼.

掲載 090101/最終更新 100805

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