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復興するものせざるもの  行程・地図
 1995年1月17日,阪神淡路大震災.
 私の回りで聞く"焼けた"という話は,第二次世界大戦の空襲を指す.関東大震災とか上野の戦争になると,書物の上のことになる.京都の人の"焼けた"は応仁の乱だとか.そんな遠い記憶ではなく,神戸の地震はまだ生々しい.
 1994年に行った灘の再訪.

 特典航空券で伊丹空港へ.できればもっと遠くで使いたかった.大阪・神戸ならば新幹線の方が間違いなく早い時間に着く.
 まずは摩耶山.三宮のバス乗り場が分からなく,目の前を狙いのバスが通り過ぎて行く.やむなくバス乗り場の案内板を見直して,阪神前でバスを待つ.すると,摩耶ケーブル近くを通る別系統のバスがあることが判り,これに乗車する.バスは,件の案内板の目の前に停車する.むーん.

 摩耶ケーブルは震災で運休が続いていたが,2001年にまやビューライン夢散歩として復旧した.今はケーブルとロープウェイがともに神戸市都市整備公社に属しており,どちらも20分間隔で運行している.
 ケーブルは高尾山並みの旧斜度をぐいぐい登り,5分で虹の駅へ.ロープウェイ駅へ駆け込むと,全く発車の様子がない.お互いに10分ずらして20分間隔で運行すれば,乗継がスムーズなのだが,乗り継ぐ誰もが15分待たねばならないちょっと間抜けな時刻設定をしている.ただし,駅に残っていた掲示を見ると元は10分ずらしだった模様.
 ということで,摩耶山を見る持ち時間が10分短くなり,ロープウェイ星の駅から,天上寺へ急ぐ.
 天上寺は,摩耶山の山腹にあった名刹だが,1976年に全伽藍が焼失した.賽銭泥棒の放火が原因と「むかしの神戸」(神戸新聞社(1997))には記されている.現在,摩耶山頂に本堂や摩耶夫人(まやぶにん)堂などが再建されており,浄財を募りさらに諸堂を復興しようとしている.
 帰りは天上寺旧地を見るために徒歩で下山.最も奥の三社権現堂石垣から,奉賛金記念石,本堂跡へと逆順に見て回るが,建物はあとかたもない.さらに塔頭がならんでいた石段をおりきると,仁王門は無傷で残っていた.ここから右へ道を取れば旧参道を下山できるし,私のようにサボってケーブル駅へ行くこともできる.
 乗り継ぎ設定による10分のロスを取り返して,発車4分前に駅に到着.出札のお姉さんが運転士(まあ車掌だが)に早変わりする省力化体制を取っていた.
 バスはすぐに接続しており,三宮へ戻る.摩耶山の所要時間は3時間で,結構な難物だった.


天上寺旧境内
 今度は灘の酒蔵へ.「長者番付」に蔵元の名がぞろぞろ出てくるが,94年に灘を訪れた時にはこんなに日本中回るつもりはなく,ほとんどパスしていた.
 最初に行った大石駅近くの金盃酒造は健在で,創業者の高田三郎氏の銅像は若々しかった.大手の沢の鶴,富久娘に続いて,忠勇へ.遠くから屋上の看板が見えるが,地図にある工場の位置とは違っている.震災後,漬物会社と合併して,食品に活路を見いだしているとか.看板を目印に近づこうとするが,どうしても接近できない.裏口らしいところ(もしかしたら正門)には会社名も掲げられていない.ダイジョウブか?


金盃創業者高田三郎氏
 今度は御影へ.御影駅そばの泉正宗では,地図に記されていた工場建物はなくなり,事務所棟だけになっていた.ただし,泉酒造株式会社の表札は残り,建物に灯りはついていた.
 東へ道を取り,創業200年の虎屋吉末(復興した)の角を北へ曲がると世界長の跡地.ここは,震災後廃業してしまい,今はスーパーとなっている.敷地を一周したが,全く何も残っていない.
 白鶴は酒造資料館を修復して公開している.菊正宗の酒造記念館は江戸初期の酒蔵を移築した文化財だったが,震災で倒壊してしまい,新たな形でオープンしている.


泉酒造
 住吉川を渡って魚崎へ.魚崎郷を代表する櫻正宗は,焼板塀がずぅっと続いていたのだが,今は,西側は酒蔵,東側は櫻宴という食事のできる観光施設に変わっている.
 堺から移転した肥塚(都菊)は魚崎南町4-3にあったが,あるのはホームセンターと別の酒蔵ばかり.同じく堺から移転した金露酒造は魚崎南町5-5にあったが,新築の高層住宅に変わってしまっており,住宅に挟まれて田端酒造が1軒だけ残っていた.堺の酒造業では,もう一軒菊泉が噺に登場するが,こちらは疾にない.
 地上4階の南魚崎ホームから,もう一度魚崎郷を見はらしてみる.


魚崎郷
 さて,話はかわる.今回の帰路は,越後線の内野駅で買った神戸市内発北陸線経由の乗車券を使い,新神戸−新大阪を新幹線,サンダーバードを乗継割引とした.
 どこで打ち止めになるかわからない見物が,住吉で終わったので,このまま在来線で新大阪へ戻ってもよい.この場合,新幹線特急券は掛け捨てになる.その方が早くてしかもタダだが,乗継割引を悪用したようになる.
 ここで疑問は,住吉から神戸方向へ乗って三ノ宮で乗り換えられるかだ.神戸市内発の切符では,神戸市内で途中下車はできない,これが常識的な考えだ.自動改札に入れれば,吐き出さずそのまま食われてしまうだろう(現に,都区内を通過して都区内に戻る切符は初めて通った都区内で食われた).しかし,内野駅では新幹線に乗ることを前提に神戸市内発の切符を発券した.
 新神戸と神戸は同一駅とみなすから,神戸駅での乗換は間違いなく可能だろう.ところが,住吉駅で聞くと三ノ宮で下車可能とのこと.ありがたいのだが,どうも解せない.もし,兵庫方向から乗って三ノ宮で下車したら,神戸−三ノ宮−新神戸間の1駅分重複乗車にあたるはずだ.
 三ノ宮駅では,どこから乗ったかも訊ねず,しかも途中下車印!を押した.これでは三ノ宮で在来線に再乗車できそうな雰囲気だ.う〜ん.途中下車は前途無効で,これはラッチ外乗り換えのはずだが…….
 今さら後へは引き返せないので,地下鉄運賃200円と多大な乗り換え時間とを引き替えに,ガラガラの新幹線にゆったり座ってきた.

 ここまで書いてから時刻表を見たら,例外的に途中下車可能とちゃんと書いてあった.知らないことは恐ろしい.
2004年10月

初 日   紀行
8:15 羽田空港 9:30 大阪空港 JAL1505
9:40 大阪空港北T 10:20 三宮 バス
10:42 阪神前 10:58 観音寺 市バス
11:20 摩耶ケーブル駅 11:25 虹の駅 ケーブル
11:40 虹の駅 11:45 星の駅 ロープウェイ
摩耶山
12:40 虹の駅 12:45 摩耶ケーブル駅 ケーブル
12:53 摩耶ケーブル下 13:15 地下鉄三宮駅前 市バス
13:26 三宮 13:32 大石 阪神
金盃,沢の鶴,富久娘,忠勇
14:35 西郷 14:41 阪神大石 バス
14:52 大石 14:56 御影 阪神
泉正宗,世界長,白鶴,桜正宗,肥塚,金露
16:09 南魚崎 16:13 住吉 六甲アイランド線
16:19 住吉 16:27 三ノ宮
16:39 三宮 16:41 新神戸 地下鉄
16:49 新神戸 17:04 新大阪 こだま656

掲載 050114/最終更新 061201

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