HOME >> 圓朝作品のあらすじ >> prev 因果塚の由来 next
因果塚の由来   
−いんがづかのゆらい−

 根岸お行の松の角書.圓朝が演じたことがあるというが,語り口は他の圓朝ものとはかなり違っている.初出は雑誌『文の錦』(1897-98)に連載された「離魂病」.登場人物図を見てわかるように,前半は現行の「お若伊之助」.後半はお若の双子が主人公となる.最後は兄妹で契ったことから因果塚を建立する.確かに,狸の子を産んでも因果塚のはずはない.『圓馬十八番』 (1925)に収められた「お若伊之助」では,お若が離魂病にかかる上方系の演出をとっている.これは五明楼玉輔(3)[1847-1918]が得意にしていたという.そうなると,先行する大阪の離魂病演出を,現行のお若伊之助に取り入れて「因果塚の由来」が創られたと考えるのが自然だろう.
 大あらすじ
 お若のもとに通う伊之助が2人.1人は古狸だった.お若が産んだ双子はそれと知らず夫婦に.20年後には,今度はお若が2人.どちらが本当のお若なのか.
 お若伊之助
 明治20年頃,お若,叔父の高根に預けられるが伊之助と密会−鳶頭の勝五郎と叔父,よく見定めた上で伊之助を射殺.忍んできた伊之助の正体は古狸だった
根岸お行の松
 神奈川へ駆け落ち
 お若,双子を産む−双子の1人,米は越前屋の養女になる−もう1人の伊之吉は大工の大芳のもとへ−お若,尼になる−しかし,門付けの伊之助に会い,密会−これを勝五郎に見つかる−2人は駆け落ちの相談−お若,いったん叔父宅へ連れ戻されるが逃げ出す−品川駅の火事で2人はぐれる−ごろつきの勘太に見つかる−お若1人で神奈川まで汽車に乗って逃げるが勘太に追われる−勘太の親,勘兵衛に救われる−伊之助,駆け落ち先の勘兵衛を訪ね,お若と再会−男子岩次を出生
神奈川駅
 品川の女郎花里と伊之吉
 品川和国楼の米改め花里のもとへ伊之吉通う−客の海上渡,花里を身請けする計画−亭主は花里に身請けの承諾を勧める−朋輩の小主水の計略にしたがい,身請けされるふり−裏口から舟に乗り米と伊之吉は逃げおおせる
品川土蔵相模あと
 神秘の離魂病
 20年後,お若伊之助の2人,勝五郎を訪ねる−お若はずっと高根の家にいてぶらぶら病だと告げる−今度はお若が2人.再び狸の怪異か−勝五郎,お若らを高根のもとへ連れて行く−花里と伊之吉,偶然,高根家へ逃げ込む.花里は実はお米だと判明−兄妹で契っていたと知ったお米伊之吉は入水自殺−お若は離魂病によって分身したものだった−片方のお若は消滅,もう一方は死亡.伊之助自殺−岩次,仏門へ.谷中に因果塚建立
根岸狸塚

 はなしの足あと
 始まりは根岸の寮.鳶頭が伊之助のところと往復する場面はない.横浜へ駆け落ちしたお若と伊之助が品川ではぐれ,お若だけが神奈川で悪漢に襲われる.時は流れてお若の娘が主人公.品川遊廓と下谷の鳶頭の家,再び根岸の寮に場面は移る.

 はなしの人びと
伊之吉 いのきち お若の双子.大芳にもらわれる.入水自殺.
伊之助 いのすけ 菅野伊之助.若の愛人.自殺.
伊之助 いのすけ 実は古狸が化けたもの.高根晋斎に殺される.
岩次 いわじ お若伊之助の子.
海上渡 うながみわたる 仮名.お米の客.
越前屋左兵衛 えちぜんやさへえ お米預かる.
勝五郎 かつごろう 鳶頭.伊之助を預かる.
勘太 かんた 元大工.お若をさらおうとする.
小主水 こもんど 和国楼の遊女.
しゅん しゅん 大芳の妻.元芸者.
甚兵衛 じんべえ 勘太の父.お若を救う.
大芳 だいよし 大工芳太郎.伊之吉を預かる.
高根晋斎 たかねしんさい お若の伯父.
よね お若の双子.越前屋にもらわれる.和国楼で花里の名.入水自殺.
わか 伊之助と一子,古狸と二子を設ける.離魂病.
和国楼主人 わこくろうしゅじん 品川の遊廓和国楼の主人.お米を抱える.

掲載 090101/最終更新 240101

HOME >> 圓朝作品のあらすじ >> prev 因果塚の由来 next