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ファイナルランは御嶽山 | 行程・地図 |
とうとう全てが終わる,はずだった. まとまって残っていたポイントの御嶽山登山.山開きは6月15日なので,御嶽講の社中が来ない6月8日に行くことにした. 車中泊のため,初日はゆっくりと12時のあずさで信州へ向かう. とは言うものの,夜までの時間があるので,落ち穂の数点をこなすこととした. レール&レンタカーを利用し,塩尻で軽自動車を借りだす.まずは辰野に向かう.辰野は「駅名読み込み川柳大会」と金語樓の新作「市川中六」に出てくるだけの地名だが,塩嶺トンネルが通って以来,ほとんどの中央線の列車がみどり湖経由になってしまったことを思うと感慨深い. | |
中央線を辰野に引いた代議士伊藤大八の銅像があるという.以前駅前を探したが見つからなかったので,今回は役場に訊いてみた.担当者が不在のため,おおよそ駅北方の丸山球場のそばと教えてもらう.丸山球場の近くで農作業に励む老女に球場への道をたずね,球場を一周するが銅像は見あたらない.今度は彼女に銅像を探していると訪ねると,伊藤大八(でぇはち)さんかと言い当てる.ここから堰を切ったような説明が始まった.いわく,辰野へ線路を持ってきた功労者であること,無駄なトンネルを掘ったが出水で費用がかかりすぎ既存路線を複線化したほうがどれほど良かったかということ,日本一古い道祖神のこと等々,キリがない. 伊藤大八は独断で中央線計画を辰野回りに書き換えたと言われる一方,路線の綱引きの調整役を果たしたとも,当時の技術ではトンネル掘削はできなかったろうとも言われている.いずれにせよ周囲は我田引鉄と貶めるが,地元では大八さんのおかげで通っている.緑青に覆われた銅像は丸山の奥の奥,辰野を見下ろす公園にあった. | 伊藤大八像 |
次は高遠に向かう.サクラの時期は疾うに過ぎているので,大奥を揺るがした江島事件関係を見て回ることにする.まずは蓮華寺の江島の墓.夕刻が近かったが開門されており,本堂裏の高台に小ぶりの板碑状の墓がひっそりと立っていた.続いて江島囲み屋敷を復元した町立博物館に向かう.江島が28年間幽閉された8畳の部屋の周囲は粗い格子で囲まれ,起居すべて監視されていたという. | 江島幽閉の間 |
続いて伊那.伊那の勘太郎の歌謡碑を見るために春日公園に行く.歌謡碑よりも3mもあろうかという勘太郎顕彰碑が目立つ.映画の中の人物と思っていたが,王政復古を目指した実在の人物だった.これから国道361号である権兵衛峠を越えて木曾へ向かうが,山道にかかると,路肩が崩れて通行止めの看板が立っている.やむなく高速を使って塩尻回りにするかと山を下りると,権兵衛トンネルの案内がある.この道はカーナビには出ていない.コンビニで地図を見ると新しいトンネルが通ったようだ.鉄道トンネルは辰野をさびれさせ,高規格の権兵衛トンネルは木曾谷に祝賀ムードをもたらしていた. | 伊那の勘太郎 |
御嶽山の登りにかかるにつれ,雨足が激しくなり霧も濃くなってきた.田の原駐車場に着いても,駐車の枠すら見えない.宿泊施設のものとおぼしい車が2台とまっているだけで,他には車がない.持参の毛布をかけて車内で仮眠をしようとするが,車内はどんどん冷えてきて寝付けない.フロントガラスにはみぞれ状の雨がドロリと流れていく.時々エンジンをかけて車内を暖め,ようよう1,2時間ほど眠っただろう.3時過ぎに出発する. | |
しばらくは平坦な道をキャップライトを頼りにすすむ.次第に雪道となり,用意のアイゼンをつける.うれしがっているのもつかの間,九合目までくると大雪渓が道を埋めており,どこが登山路かわからない. 雪山登山の経験も装備もない明け方の単独行.やむなく直登し,そろそろと雪渓を横断する.ピッケルも持ってないので,滑落したらアウトだ.ようようたどり着いた標高3060mの山頂は,強風で立っていることも叶わない. | 御嶽山頂 |
さらに三の池に行かねばならない.横殴りの雨風に飛ばされそうになりながら,石に描かれたペイントを頼りに進むが,それも雪の斜面に消されている.気息奄々,三の池から500mほどの白竜小屋まで着いた.道標は東の方へ進めと指示しているが,そこから先はただの大雪渓で,視界の先に湖は見えない.登山口の駐車場に他の車はいなかった.この山にいるのは自分だけだ.ここを滑り降りたら,這い上れっこない.女郎買いの決死隊はイキだが,落語旅で死ぬのはバカだ.ここまで来たのもバカだ. 結局,三の池を断念して駐車場に戻ってくれば,別天地のような穏やかさ.しかし,冷え切ったカメラのレンズは内側から結露してしまい使い物にならなかった. | 雪渓は招くよ |
これで最後の"旅"が終わった.「樟脳玉」ならずとも気が残ってはいる.海外にまで目を向ければ,中国には函谷関,長坂橋,阿房宮,鴻門などの史跡,インドには祇園精舎,ルンビニなどの仏跡が残っている.マイナーな落ち穂は無視するとして,現時点で行きおおせなかったポイントは,御嶽山三の池,小笠原,イギリス ダートムーア,フランス カレー,御所,淡路島の岩屋の6ヶ所となった. | |
2006年6月 |
初 日 | 紀行 | |||||
12:00 | 新宿 | 14:35 | 塩尻 | あずさ17 | ||
15:00 | 塩尻 | レンタカー | ||||
15:45 | 辰野 | |||||
16:20 | 高遠 | |||||
17:30 | 伊那 | |||||
21:00 | 田の原駐車場 | |||||
2日目 | ||||||
3:15 | 出発 | |||||
6:25 | 剣が峰 | |||||
7:50 | 白竜小屋 | |||||
9:30 | 剣が峰 | |||||
11:55 | 田の原駐車場 | |||||
13:30 | 清滝 | |||||
15:23 | 木曽福島 | 15:49 | 塩尻 | しなの15 | ||
16:12 | 塩尻 | 18:34 | 新宿 | スーパーあずさ28 |
掲載 060701/最終更新 061201