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真景累ヶ淵   
−しんけいかさねがふち−

 言わずと知れた圓朝の代表作.幕末,若き圓朝が古累と呼ばれる芝居噺を演じていると,師の圓生(2)が先回りして素噺で演じて妨害したため,困り果てた末に創作したという.タイトルは,名所図にもよく使われる"真景"の文字に,幽霊が見えるのも"神経"の作用によるという意味を掛けている.圓朝曼荼羅と呼ばれるにふさわしい込み入った登場人物と因果はめぐる筋立て.「豊志賀の死」を中心に「聖天山」までがよく演じられ,芝居,映画,劇画になっている.惣吉を主人公とする後半部を演じることはまれ.

 大あらすじ
 七人までの妻を呪い殺すと新吉を恨んだ豊志賀.果てることなく続く血族同士の殺し合いは,前世からの因縁なのか,それとも呪いの鎌のせいか.
 宗悦殺し
 安永2(1773)年12月20日,鍼医の皆川宗悦は,小日向服部坂に住む小普請組,深見新左衛門宅へ借金の取り立て−激昂した新左衛門,鞘ぐるみ宗悦を斬り殺す−死骸を家来の三右衛門に捨てさせる.三右衛門は故郷の羽生へ−1774年,深見,お熊を仲働きに採用,実際は妾−深見の妻が病気.12月20日,呼んだ流しの按摩が宗悦の姿に変わる.思わず斬りつけると,宗悦ではなく妻を斬り殺してしまう/1775年,深見,隣家の騒動で突き殺され,家は改易となる.お熊は産んだ子と深川へ.門番の勘蔵は,新吉を連れて下谷大門町へ
小日向服部坂
 松倉町の捕物
 深見新五郎,谷中七面前の質屋,下総屋に奉公−女中のお園に恋情.実はお園は宗悦の次女−1776年,新五郎,お園を犯そうと押し倒すと,背中の下に押切があり,その刃でざくざくと切り殺してしまう.新五郎は仙台へ逐電/1778年,江戸に密かに戻ると,松倉町で追手の気配.あわてて隠れた家が捕り方の妻の家で,刃物を隠されてしまい,やむなく二階から飛び降りると,下に押切の刃−新五郎,捕縛され獄門にかかる
谷中七面堂
 豊志賀の死
 1793年,根津七軒町に住む富本の師匠豊志賀は,出入りの煙草屋新吉と年が離れているがいい仲になる.実は豊志賀は宗悦の長女−1794年,弟子の若いお久との仲を邪推したせいか,豊志賀の顔に腫物.これがどんどん腫れてくる−看病に疲れた新吉が,戸外でお久と出くわす.2人で鮨屋の2階に上がると,急にお久の顔が豊志賀のようになる−びっくりしてお久を置き去りにして勘蔵の家に戻ると,重病の豊志賀が来ている.駕籠に乗せて戻そうとすると,七軒町の隣人がやって来て,豊志賀が死んだという報せ.駕籠にいるはずだと一笑に付して中をのぞくと無人−豊志賀は自害.新吉の妻を7人まで取り殺すという遺書を見つける
七軒町圓生(4)墓
 お久殺し
 1794年8月,豊志賀の墓参で出会った新吉とお久,その場でお久の実家の下総羽生村へ駆け落ち−日が暮れた鬼怒川を渡ると,そこは累ヶ淵.お久,土手の草むらにあった鎌で足を怪我−介抱しながらお久を見ると豊志賀の顔.新吉,思わず鎌でお久を惨殺−それを目撃した土手の甚蔵と格闘となる.落雷の隙に逃げる−逃げ込んだ家が甚蔵の留守宅−甚蔵,新吉から金を強請ろうとするが,新吉が文無しと知り落胆
羽生村水門
 迷いの駕籠
 新吉,お久が埋葬された羽生村の法蔵寺へ墓参−そこで出会ったお累が江戸育ちの新吉に恋慕.実はお累はお久の従姉妹で,父親は宗悦の死骸を捨てた三右衛門−甚蔵,お久殺しに使われた質屋三蔵の焼き印がある鎌をネタに,お累の兄の三蔵から20両強請る.その晩,お累,煮え湯で顔に大やけど−新吉をお累の婿にという縁談.甚蔵,新吉には借金があると嘘をつき,手切れがわりに金をだまし取る−婚礼の晩,お累の顔の変わりように新吉は驚く.豊志賀の因縁を感じて改心−お累妊娠/1795年,勘蔵が危篤との報せ.江戸へ向かう−勘蔵の遺言で,新吉が深見家の次男だと知る−下総への戻り道,駕籠で亀有へ向かうが,どうしても駕籠が小塚原へ向かってしまう−小塚原で兄の新五郎が現れ,ついには斬られる.とそこで夢から覚める−駕籠から出ると,そこはやはり小塚原.獄門の札に新五郎の凶状が書かれ,豊志賀の妹のお園殺しの下手人だと知る
小塚原首切り地蔵
 お累の死
 月満ちてお累が産んだ子は,なんと獄門台の新五郎に生き写し−1796年,墓掃除する新吉は,名主惣右衛門の妾,お賤に会う.実はお賤は深見の妾であるお熊の娘−新吉,お累に嫌気がさし,お賤と密通−あきれた三蔵は30両の手切金で新吉一家と縁切り−金に困った新吉,蚊帳をお累の生爪ごと引きはがし,赤子には煮え湯をかけて殺す−その晩,お賤のところにお累の霊.戻るとお累は鎌で自害している−新吉,村の爪弾きになる
法蔵寺累の墓
 聖天山
 お賤の頼みで新吉は名主の惣右衛門を扼殺−湯灌を手伝った甚蔵が殺人だと気づく−甚蔵,お賤に金の無心−お賤にたきつけられ,新吉,聖天山に金を埋めたと偽り,甚蔵と2人で金を掘りに行く.隙を見て甚蔵を崖から突き落とす−手負いの甚蔵が襲いかかり,これをお賤が鉄砲で射殺
鬼怒川累ヶ淵
 麹屋のお隅
 惣右衛門の息子の惣次郎,水海道の麹屋で女中のお隅と馴染み−1798年,大生郷の天神前の宇治の里で,お隅に惚れた安田一角が惣次郎に因縁をつける−相撲取りの花車が剛力を出して安田一味を追い払う/1799年,旗本の倅,山倉富五郎が作荒らし−惣次郎のところに食客.お隅を口説いたため,叱られる−富五郎,一角に取り入って,惣次郎を弘経寺の裏手で殺害.そこへ花車が通りかかる−花車,落ちていた脇差を証拠に富五郎を問いつめ,安田が犯人だと知る.富五郎逃亡−お隅,わざと愛想付かし.麹屋で飯盛となる−その噂を聞いてお隅に惚れていた富五郎が泊まる.お隅,富五郎から安田の居場所を聞きだす−富五郎殺害に成功.しかし,安田に返り討ちになる
水海道糀屋
 明神山の仇討
 1799年(1800年か),惣吉と母,仇討ちに出発−母が腹痛のため塚崎の観音堂に休む.惣吉が薬を買いに行く隙に,母が扼殺される−惣吉,藤心村の観音寺の小僧となる/1802年,松戸の小僧弁天で,馬方作蔵から三蔵のことを聞いた新吉は,待ち伏せて三蔵を殺し,金を奪う−塚崎の観音堂に休む−そこの尼こそ,お賤の母のお熊.惣吉の母を殺した犯人−お賤と惣吉から事情を聞く.新吉とお賤が実は兄妹だと知る−新吉,お賤を鎌で殺害,自分は自害.お熊も鎌で自害−惣吉,還俗して,山賊となった安田が根城としている明神山へ−花車も加勢して怪力を発揮,ついに惣吉は兄の敵の安田一角を討つ
明神山

 はなしの足あと
 前半は江戸市中が舞台.迷いの駕籠では,どっちに向かっても処刑場の小塚原へ来てしまう怪異.お久と駆け落ちするところでは,鰭ヶ崎の渡しが不明.ここからは,水海道,羽生村(常総市)に舞台が移る.実在地名も多いが,一部は創作.演じられない仇討の部分では,塚前,藤心,藤ヶ谷(柏市)が舞台になるが,地理に混乱が見られる.
 はなしの人びと
宇田金五郎 うだきんごろう (-1763) お熊の夫.甚蔵の父.死亡.
梶井主膳 かじいしゅぜん   龍泉寺前の占い.深見を斬り,座光寺らさらう.
勘蔵 かんぞう (-1795.08.16) 深見の門番.改易後大門町で新吉を養育.
くま (1746-) 中働きから深見の妾へ.後尼となる.新吉の母を柏で殺す.
作蔵 さくぞう   馬方.安田の一味になる約束.新吉に殺される.
三右衛門 さんえもん   元深見の家来で宗悦の死骸処理.労賃元に羽生村で質屋.累の父.
三蔵 さんぞう (-1802.07.21か) 累の兄,お久の伯父.元下総屋の番頭.新吉に松戸で殺される.
しず (1775-1802.07.21か) 甚蔵と兄妹.新吉と出奔.改心した新吉に殺される.
下総屋総兵衛 しもうさやそうべえ   谷中七面前の質屋.園,新五郎の主人.
新吉 しんきち (1773-1802.07.21か) 深見の次男.勘蔵に養育,煙草屋奉公.豊志賀の情夫.お久と駈落ち.累と結婚後,お賤と密通.甚蔵,惣右衛門殺す.
新五郎 しんごろう (1756-1778) 新吉の兄.お園殺し逐電.松倉町で捕縛,獄門.
すみ (1777頃-1800.12.16) 惣右衛門の妾.山倉,貞蔵討つも安田に殺される.
宗悦 そうえつ (-1773.12.20) 根津七軒町.盲人の金貸し.深見に殺される.
惣右衛門 そうえもん (1742-1796.09.04または08.21) 羽生村名主.妾の賤,新吉に殺される.
惣吉 そうきち (1790-) 賤の子.仇討の途中出家し宗観,還俗し仇討.
惣次郎 そうじろう (-1809.08) 惣右衛門の子.安田一角に殺される.
その (1757-1776.11) 宗悦の長女.新五郎に殺される.
貞蔵 ていぞう (-1800.12.16) 安田の内弟子.お隅に殺される.
道恩 どうおん   観音寺の和尚.新吉預かる.追い剥ぎに会う.
土手の甚蔵 どてのじんぞう (1762-1796.09.11) お熊の子.鎌で三蔵ゆする.新吉らに騙し討ち.
豊志賀 とよしが (1755-1794.08.06) 宗悦の次女,志賀.富本の師匠.仇の新吉を情夫に.腫瘍で死に,新吉にたたる.
花車重吉 はなぐるまじゅうきち (1771-) 関取.安田一角と喧嘩.惣次郎殺し目撃.仇討.
ひさ (1777-1794.08.27) 羽生屋の娘.新吉と駈落ち,羽生村土手で誤って鎌で殺される.
深見新左衛門 ふかみしんざえもん (-1775か) 小日向服部坂.小普請組.宗悦,妻殺す.梶井に殺され改易.
安田一角 やすだいっかく (1759-1802) 剣術師.お隅の件遺恨で惣次郎殺す.お隅返り討ち.追剥の首領.新吉,花車に討たれる.
山倉富五郎 やまくらとみごろう (-1800.12.16) 瓜盗みが縁で惣次郎に出入り.安田と謀り惣次郎殺す.お隅に討たれる.
与之助 よのすけ (1795.08-1796.07.21) 新吉の子.新吉に殺される.
るい (-1796.07.21) 新吉に恋慕,火傷負う.新吉と結婚し子を設けるも新吉に虐待され鎌で自殺.
深見新左衛門の妻 ふかみしんざえもんのつま (-1774.12.20) 宗悦の亡霊と誤った深見に斬られる.
惣右衛門の妻 そうえもんのつま (-1800.01.01か) 仇討の途中,お熊に殺される.

掲載 090101/最終更新 100805

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