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指仙人   
仙郷ガイドブック −ゆびせんにん−

 東京種だろう.速記でしか見たことがない.元は山の中に男を訪ねて行くストーリーだったのを鼻の圓遊が花魁に変えたという.神かくしとか隠れ里とか,あるいは蒸発とか,未知なる世界には怖さと覗いてみたさが同居している.

 大あらすじ
 失踪した花魁が木曽にいると夢で知った若旦那,さっそく幇間と木曽山中に出発.3日目に仙人となった花魁に出会う.花魁が天を指さすと,食べ物や金が降ってくる.

 こぼれ話
 まずはガイドブックを用意せにゃならん.「落語選集 凄艶妖怪篇」という本じゃよ.日本で出された本なので,アマゾンの奥地でみつけようったってそうはいかん.それを片手に仙郷へ向かうぞよ.
 上野駅から列車に乗り込む.その日は篠ノ井で一泊し,翌日午前5時27分篠ノ井発の一番列車に乗って,8時10分に塩尻に着くわ.そこからは徒歩で薮原まで五里五丁ある.そこでもう一泊していよいよ山に入るのじゃ.六,七里山に分け入ると道が二またに分かれておる.迷っていると猟師が道案内してくれる.道案内がなければ,勘で進め.この先一里で猪谷,さらに,うわばみ山に至り,五,六里で仙郷に到着する.どうじゃな,ここまで詳しく書かれているので,きっと行き着けるじゃろう.お前さんが行きすぎなければな.

 なかなかに人里近くなりにけり あまりに山の奥を訪ねて

粂の仙人
 時代設定がかなり限定される.塩尻に出るのに信越線回りを使っているので,篠ノ井線長野−塩尻間の開通後で,かつ中央線甲府−塩尻間の開通前の時期に限定される.つまり,1902(明治32)年から1906(明治39)年の間に演じられた噺を速記したらしい.大正14年4月に発行された汽車時間表によると,篠ノ井の始発は6時58分で塩尻着は9時37分,所要2時間39分となっており,噺の所要時間2時間43分と大差がない.2009年現在では,6時45分篠ノ井発,8時17分塩尻着で,所要時間1時間32分となっている.現役のスイッチバックを2ヶ所残しているため,かなり遅い平均時速(表定速度)となっている.
 山奥で仙人となった花魁に出会う.指をさすだけで何でも取り出せる花魁仙人の魔法の指を見て,男が指を切ってくれとお願いすると,ずいぶん疑り深いわね,というのがサゲ.わかったようでよくわからない.花魁がまだ男を好いているとでもいうセリフがあれば,その証拠だてに指切りをするという遊里の習慣を踏まえたサゲになるのだろう.色男の仙人を惚れた女が尋ね,その指が憎いとでもいうと,もっと艶笑噺になりそうだが.


御嶽山
(谷文晁,日本名山図会)
 はなしの足あと
 道中付け:上野駅→篠ノ井→塩尻→洗馬→薮原→猪谷→蟒蛇山→仙郷

掲載 091107

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