HOME >> 旅のはなし >> prev 佃島 next
佃島   
ついに異次元へ −つくだじま−

 東京の古典落語だが,演じられることがないはず.明治の雑誌,百花園に載っている.あるはずのないことが起きるのが落語の楽しさだとすれば,こんな面白い噺はない.

 大あらすじ
 品川から台場へ夜釣りに出た一行,大嵐にあってどこともわからない土地に漂着する.そこに現れたのは色の真っ黒な大男.あわてて命乞いをすると...

 こぼれ話
 大あらすじの先が,サゲになる.「どこの国の方かは存じませんが,私の言葉がわかりますか.どうか,命ばかりは助けて下さい」「馬鹿野郎!ここは佃島だ」
 佃島.最寄り駅は有楽町線の月島駅.有楽町から3つめ,所要時間5分.今は佃大橋があるので築地側とも陸続き同様の土地だ.蛮族の住む島へでも流されたかと思ったら,江戸と指呼の間の佃島に着いただけというのが,もともとのサゲになっているのだが,実は何か深い落語に思えてならない.
 今でも佃島は土地の人が住み続け,江戸から続く習慣を守り伝えている町,江戸の風が最後まで吹いていた土地だ.渡船でしか行けない江戸湾に浮かぶ佃島は,当時でも異国を思わせる雰囲気があったのではないか.

お台場クルーズ
 佃島を演じるならば,現代を舞台にするのがいい.隅田川を発った釣り船が,お台場の脇をぬけて,東京湾でひとしきりアナゴやらカレイをねらっていると,急に空がかき曇る.大波にもまれて船外機も壊れてしまい,船は漂流をはじめる.
 漂着したのは灯り一つ見えない真っ暗な土地.目ばかりギラギラと光ったふんどし姿の男が現れる.「お前ら,誰だ?」
 ありがたい!日本語だ.北朝鮮にでも着いたら大変だった.エンジンが壊れてボートが漂着した事情をこわごわ話すと,相手はけげんな顔.「喋ってることがちっともわからねえ.いったい全体どこのものだ」「東京です」「東京ってえのはなんだ?ここは佃島だ」 がサゲ.

 そう,江戸へタイムスリップしてしまっのだ.
 目と鼻の先にあった我が家へは,100年経っても戻れない.


佃島
 はなしの足あと
 舞台の移動:品川→台場→佃島

掲載 110802

HOME >> 旅のはなし >> prev 佃島 next