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付き馬   
無銭飲食・詐欺罪 −つきうま−

 東京種の古典落語.こんな風にタダで遊べたらうらやましいと思うか.それともけしからんと思うか.同じ落語を聴いても感じ方が正反対というのがおもしろい.どうせ学校じゃ教えないことなんだからどっちでもいいのでは.

 大あらすじ
 翌日に勘定を払う約束で妓楼に揚がって遊んだ男.弁舌巧みに付き馬の妓夫太郎を連れだし,吉原を出て雷門まで引っ張り出す.とうとう,早桶屋のおじさんに無理を言ってこしらえてもらう.

 こぼれ話
 そう,田原町のおじさんにこしらえてもらうのだ.勘定ではなく腫れの病で急死した兄貴の早桶を.ネタバレで申し訳ないが,妓夫太郎から朝飯の釣り銭までいただいてしまう男がまともに勘定を払うわけがない.
 しかし,うらやましいような弁舌と度胸だ.吉原の廓内で代金を払う約束が,田町を抜けて,浅草寺を抜けて,仲見世を抜けて雷門まで引っ張ってくるとは.途中,付き馬の払いで朝湯に入り,湯豆腐でいっぱいやったりもする.
 早桶屋のおじさんが使う符牒をすぐに飲み込むのは,さすが妓夫太郎も江戸っ子のはしくれだ.ちなみに輿屋仲間では,遊廓で騒ぐのを通夜,客のことを仏,銭のシグサは指を丸めるのではなく両手で小判型を作る.墓行きがするなんて洒落もバッチリ決まった妓夫太郎だが,できてきた早桶を見て縁起が悪いと商売ものをけなしたのは,ひどくまずかった.職人の逆鱗に触れてしまい,巨大な早桶をむりやり背負わされてしまった.棺桶をひっぱって歩いて行くのは,荒野の用心棒か,瀕死のDQパーティぐらいのものだ.

田原町
 やはり浅草公園,浅草寺あたりの描写が楽しい.明治の噺と最近の演じ方を混ぜて道中付けとしてみた.岡田は惣菜の別名で知られる料亭,大金は有名なシャモ屋,一直は今でも浅草寺の北で営業している料亭.こんな名前が出てくるとワクワクする.このルートだと北から直接浅草寺に入ってしまうが,西側の公園地や瓢箪池を冷やかしてから浅草寺に入るのも1つのルート.震災で壊れた十二階は出しづらい.そういえば,慶応年間に焼けて以来,売防法施行まで再建されなかった雷門を出した大看板がいたが,身のすくむ思いだ.
 なかでも,奥山のところに今でもきちんと正座している瓜生岩子刀自の銅像ははずせない.謹厳な慈善家のことを無銭遊興の男が紹介するのがいい.

浅草寺瓜生岩子像
 噺の中では,鳩豆を売るお婆さんが,商売ものの豆に手を出そうとするハトを竿で追い払う場面がある.数年前までは本堂前に小屋があって鳩豆を売っていた.ハトによるフンや病気を媒介する心配があるというので,ハトより先にお婆さんの方が追い払われてしまった.
 仁王門を抜け,雑踏する仲見世をぶらぶらしながら,市電の車掌がぶらさげるカバンのおもちゃや紅梅焼屋を冷やかしたりする.ずいぶんと前のことだが,車掌さんが乗務している都バスに乗り合わせたことがあり,乗ってきたお客さんの方が驚いていた.今でも熊本では連結式の市電で車掌さんがバリバリ現役だ.紅梅焼は梅の花をかたどった小振りの堅焼きせんべいで,その看板を上げる店は今も仲見世で営業している.ただ,扱っているのは人形焼ばっかりで,紅梅焼はもう置いていない.


浅草寺はと豆
 はなしの足あと
 道中付け:吉原→仲の町→大門→日本堤→田町→田んぼ→一直→岡田→大金→新公園→瓢箪池→花屋敷→浅草寺→瓜生岩子の銅像→鳩豆→仁王門→仲見世→紅梅焼屋→雷門→田原町

掲載 101220

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