HOME >> 旅のはなし >> prev 苫ヶ島 next
苫ヶ島   
絶滅のおそれあり −とまがしま−

 生粋の上方落語.怪物との立ち回りが演じられるスケールの大きさと,どんでん返しのサゲがみごと.笑福亭松鶴の口演を参考にした.

 大あらすじ
 紀州公の帰城を待つ群集の滑稽が前半.領内に大蛇のいる島があることを聴いた紀州候,大蛇退治に乗り出すのが後半.大蛇に襲われた紀州候を家臣が槍をもって救う.

 こぼれ話
 あわや大蛇に喰われそうになる紀州候,そこへ割ってはいる豪傑牧野弥兵衛.大蛇の鼻面を槍の石突きでつくと,さすがの大蛇も鼻血を流して苦しむ.すかさず大蛇の首筋につかまり,とどめをさそうとすると首筋のウロコが3枚はがれる.とたんに,大蛇の鼻血が止まったというのがサゲ.盆の窪の毛を3本抜くと鼻血を止まるというまじないが,怪物にも効いたというウガチ.あっぱれ大蛇を退治した牧野弥兵衛は200石の加増を受けたという.

「はーい,みんな.船から気をつけて順番に降りるんですよ.集合時間は2時40分.それに遅れると,帰る船がなくなってしまいますからね.それまでは,班に分かれて自由行動です.それでは解散!」
「ねえねえ,やっちゃん.どこへ行く?」
「オレ,2番の"伝説を探る"コースがええ思うねん.この友ヶ島見学のしおり,見てみい.1番の"戦争のつめあと"コースなんて辛気くさいやろ,3番の"古代の仏教"コースなんて抹香くそてかなわんわ」
「やっちゃんの使てる言葉も,たいがい古くさい思うわ.ほな,みんな,2番のコースにしよか」
「そうしよ,そうしよ」

"戦争のつめあと"コース
「ずいぶん降りて来たな.ここが池や.草ぼうぼうで何も見えへんがな.おっ,飛び石の向こうが浜やな」
「コウちゃん,ここに看板があるわ.しおりに写しとかんと,センセに叱られるで」
「せやな.なになに. −ここ友ヶ島にはかつて大蛇が棲んでおり,体から放たれる夜光は遠く加太の浜からも見ることができたという.この大蛇を役行者が呪法をもって鎮めたため,深蛇池と名付けられた.この池では口笛を吹くことは固く禁じられていたが,後に和歌山城主徳川頼宣が,狩鞍の折り禁を破って笛を吹かせたところ,大蛇が復活したという伝説がある− あっ,やっちゃん.一人で勝手に行ったらあかんて」
「池〜をこえ行こ〜うよ,口笛吹きつ〜つ.ピピーピピーピ ピピーピピ.うわっ」
「大変だぁ.牧野君が池に落ちた〜」


友ヶ島深蛇池
「牧野君!気がついた?しっかりして」
「はっ.センセ.蛇が,蛇が出たっ」
「どうしたの?蛇なんかどこにもいないわよ」
「でも.オレ,池に落ちて,おぼれそうになって,これをつかむと,急に体がグワってなって」
「何,この大きな黄色いウロコ.オロチみたい……」

 てなわけで,例によって,科学者が出てきて鑑定です.
「むふふッ.なんとこれは,かつて日本に棲息していた絶滅種ムカシオオヤブヘビのウロコではないか.伝説のヘビがまだ生きていたのかっ!」

EX ムカシオオヤブヘビ (Gigantorapto tomagasii Makino) .竜弓類有鱗目オオヤブヘビ属.分布:本州中部及び島嶼(固有種).生態:体長数mから10m.黄色で背に帯状の黒斑を持つ.単性生殖が可能.肺呼吸に加え皮膚呼吸を行うため,水中に長時間とどまることができる.肉食性.音に反応して敵を襲う.容易にはずれる下顎骨を持ち,時としてシカのような大型動物を摂食する.その際,消化管が著しく膨満するため,水辺に生育するジャガンソウ(Mochinia sobaseidus)を食する.17世紀前半に最後の個体の棲息が記録されている.


聖ミカエルと堕天使ルシファーとの戦い(デューラー,黙示録)
 道中付け
 道中付け:大津→蹴上→竹田街道→伏見→枚方→泉州岸和田→和歌山の本町筋→和歌山城.加太の浜→苫ヶ島→蝦蟇ヶ淵

掲載 101006

HOME >> 旅のはなし >> prev 苫ヶ島 next