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天狗裁き   
一陣の風 −てんぐさばき−

 上方落語.実にうまくできている噺.鞍馬山から天狗が一陣の風に乗って現れる.東京にも取り入れられている.


 大あらすじ
 昼寝している最中,嫁に起こされ,何の夢を見たかたずねられる.夢なんか見ていないというと,夫婦喧嘩になる.隣人,大家,奉行が次々出てきては仲裁とは名ばかり,夢の話を聞きたがる.さらには天狗までが現れて.

 こぼれ話
 東西で演出が違う.西の演じ方が勝っている.
 東の代表と言える金原亭馬生(10)の演出では,隣家の吉夢にあやかろうとした女房が旦那に無理に朝寝をさせる.天狗が現れるのは愛宕山山頂(標高20m)で,男を天狗の栖み家に連れて行くことはない.男は夢を語るとだまして天狗から羽団扇を借り,空を飛んで逃げる.その後,長者の娘の病気を治し,お礼に婿入りというところで目が覚める.といったストーリーになっている.後半は,「羽団扇」という別の落語に似ているし,長者を救うような展開は民話の匂いが強い.なにより,サゲが悪い.ストーリーが無限連環する意外性がまったくない.
 対する西では,男を起こした嫁に夢の話を語らなかったため,とうとう天狗に鞍馬山まで連れて行かれ,あわや八つ裂きにされそうになる.あっと思った瞬間,嫁に起こされ,どんな夢見たの? はたして,男は夢の事を語るのだろうか.

鞍馬の天狗
 鞍馬山といえば竹伐り行事でも知られるが,やっぱり天狗だ.落語では,この「天狗裁き」のほか,「天狗さし」と艶笑噺の「おさん茂兵衛」に出てくる.どれも奇想天外な上に,理詰めなところもあって感心する.
 実際には鞍馬寺は,650万年前,人類救済のために金星からやってきた大魔王を祀っていて,奥の院は霊的なスポットとして有名らしい."良識ある行為こそが、正しい信仰の第一歩です。迷信にとらわれたり、非常識な行をしたりして身を亡さぬよう、ご注意ください"と書かれた立て札がある.いったいどんな荒行をしているのだろう.
 叡山鉄道の終点,鞍馬駅からは,鞍馬寺が運営するケーブルカーが本堂まで通じている.これに乗るには運賃ではなく,定額のお布施を払う仕組み.歩いて登れば,途中に火祭りで有名な由岐神社がある.僧正ヶ谷は牛若丸が天狗の僧正坊から剣術を習った地.異界の風景の奥の院魔王殿を過ぎると,鉄輪の呪いで有名な貴船神社に出る.このあたり河床料理のお店もたくさんある.


鞍馬山僧正ヶ谷
 はなしの足あと
 舞台の移動:大坂の町家→西町奉行所→鞍馬山→大坂の町家

 「天狗さし」:天狗のすき焼き屋を始めようと,深夜の鞍馬山へ天狗を仕入れに出かけた男.坊さんを天狗と間違えて捕まえ,竹にくくりつけて町へ降りてくる.向こうから同じように竹を担いだ奴が来る.お前も鞍馬の天狗さしか,いや五条の念仏さしじゃ.

 「おさん茂兵衛」:艶笑噺.太鼓を合図に隣家の嫁おさんと壁越しに密通する男.隣家の大経師屋茂兵衛が何気なく叩いた太鼓に,それ来たと壁から一物を差し出す.怒った茂兵衛,商売道具の庖丁で切り落とそうとするが,近眼のため誤って自分の鼻も一緒に落としてしまう.あわててくっつけたのが鼻ではなく男根.切りたては付きやすい,取れなくなってしまった.神仏にすがって取ってもらおうと鞍馬山に行くと,どこからか太鼓の音がする.条件反射で大きくなった一物を見て天狗がひと言.お前には敵わん.わいのはすぼけや.あらすじだけでもこんなに複雑.

掲載 100423

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