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城木屋   
東海道織り込み −しろきや−

 東京種の古典落語.もとは三題噺だという.こみ入った筋があるわけでもない.お白州の場面で東海道の地名が織り込まれる.

 大あらすじ
 お店の娘に惚れた番頭が夜ばい.捕縛されて吟味の言訳.

 こぼれ話
 夜ばいに失敗した番頭,あえなくお縄となり,奉行の吟味を受ける.お白州で饒舌となった番頭さん,東海道の宿場を織り込みながら,お店の娘を口説いた言い訳を述べ立てる.突然,お奉行さまが番頭の生国を尋ねる.すると番頭「駿河の御城下」,奉行「府中ものめ!」がサゲ.いったい何のことかと,ぽかんとしてしまう.「三方一両損」で原告被告に食事を出した上,"腹も身のうち"とたしなめる大岡越前守もすごいが,このお奉行さまもまた唐突だ.
 いまの静岡市内に駿府城があることは,知っている人の方が多いだろうが,静岡を以前は府中と呼んだと言われても納得しかねるだろう.静岡市内で府中と書かれたものを探したが,たしかになかなか見つからなかった.国府があったところが府中と呼ばれるのだろうが,東京競馬場のある府中が有名すぎて,駿府とか甲府とか言ってもらわないと,ただの府中では何か頼りない.しかも,府中の直前に出てくる江尻宿も,今の清水のことだとわからないので,もどかしさ百倍の噺になってしまっている.

府中ものめ
 東海道といえば弥次喜多道中の膝栗毛や広重の浮世絵が有名で,番頭の言い訳も膝栗毛を引き合いに出している.お駒丈八という名前も,白木屋事件のご趣向.そういえば,広重の東海道版画がお茶づけ海苔のオマケに入っていた.これを集めると何かもらえたはずで,でもそんなにお茶づけばかり食べさせてもらえなかった記憶がある.
 和歌や邦楽の文句にもあるように,掛詞で場面を転換し,次へとつないでいくことはよくあるパターン.宿場の名前をうまく織り込んであれば上出来だし,苦しければ苦しいほど面白くなる.あんなおなごを「神奈川」(かみさん?)に,「大磯」「小田原」(おおそれ,破談?)になれば,あたりは,かなり苦しい.苦しい文句をテンポ良く聞かせるのが,シャレのおもしろさ.山手線で一世を風靡した柳亭痴楽の綴方教室も同じ趣向,"三人寄れば門司の知恵と小倉い内から仕度して……流れる汗を福岡で九州に一周を得た心地"(柳亭痴楽(4),九州の旅).
 おしまいに,東海道の宿場名を絵で表現したクイズ,判じ物を1つ.鶴の絵の上半身で"つ"と読ませるとか,濁点は絵の音を濁らすとか決まったパターンがあるが,かなり難しい.


東海道五十三次はんじ物
(一鳳斎芳藤)
 はなしの足あと
 東海道織り込み:お駒はんの色「品川」に迷い,「川崎」ざきの評判にも,あんなおなごを「神奈川」に持ったなら,さぞ程もよし「程ヶ谷」と,「戸塚」まえて口説いても,首を横に「藤沢」の,「平塚」の間も忘れかね,お駒はんの聟相談「大磯」「小田原」になればよいと,「箱根」の山ほど夢にも「三島」,たとえ「沼津」食わずにおりましても,「原」は「吉原」,「蒲原」立てても,口には「由比」かね,寝つ「興津」,「江尻」もじりいたしております (三遊亭圓生(6)による)

 東海道五十三次はんじ物:2冊の本に"は"の字が4つ−日本橋,熨寸と菜っ葉と傘と環−品川,皮を裂いて−川崎,魚と皮−神奈川,帆と"ど"と薬鑵−程ヶ谷,戸と柄で−戸塚,騒ぐ船と琴柱−藤沢,白井権八と鰹で−平塚,大急ぎの−大磯,尾と俵−小田原,歯と逆さネコ−箱根,拙いぬの字は−沼津,腹がいっぱいで−原・吉原,関羽の腹で−蒲原,"どちらえ"の質問に−由比,鶴が起きて−興津,尻に絵で−江尻,文とネズミで−府中

掲載 100903

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