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芝居風呂   
六阿弥陀詣で −しばいぶろ−

 東京種の古典落語.芝居好きが銭湯を経営したらという噺.旅ネタではなく,芝居の所作がたっぷり入る芝居噺の一種.お彼岸に遊山がてら六阿弥陀をお詣りする習慣が出てくる.

 大あらすじ
 芝居好きが集まる芝居風呂.板の間も湯船も芝居の趣向だらけ.皮膚病の男が入浴しており,追い出そうとする三助と立ち回りが始まる.騒ぎの中,湯からあがろうとした男,着物の場所を聞くと,二番目じゃい.

 こぼれ話
 「芝居風呂」.古風な,それだけに魅力的な演目だ.速記は意外と多く,6種類もある.中には六阿弥陀が出てこない演出(柳家小さん(3).騒人社.桂文我(4))もある.
 芝居好きの又三郎,好きが昂じて芝居風呂をこしらえた.海鼠壁で煙出しが櫓になっている.庵看板には,書き出しが薪拾い,中軸が流し,留めが釜前.
 おゥおゥ早く裸ンなれ裸ンなれ,と舞台番.熱い?熱いったって羽目板叩いても埋まりませんよ,拍子木を二つ叩くんですよ.チョンチョン.
 流しの隅に疥癬の男が薬をつけている.その因縁を聞くと,
 「思い出せば去年の春,日もながながと六阿弥陀,五阿弥陀ぎりで引っ返し,根岸へ回った罰当たり……」「人がイヤだという薬を無理にすすめる怪しい奴,遠くは行くめえ風呂の中,あと追っかけて」
 そこへ三助が現れる.(ドンドンドンと三つ太鼓)その体でざんぶざんぶと入られちゃ,この三助の男湯が立たねえ.と立ち回り.三助,ねじ上げられ.飛んで湯に入る夏の虫.チョンチョン.オイ,俺の着物はどこだい.二番目じゃい二番目じゃーい.

芝居小屋(江戸東京博物館)
 圓生(6)の音を聞くと,朝が早かった昔の芝居の説明,昔の湯屋の説明など,丁寧にいろいろなことを仕込んでいる.二番目が二番狂言の開幕を示すこと,お湯が冷めないよう柘榴口をくぐって湯船に入ったことなどなど.人形町末広の録音なので昭和30年代だろう,演者だけでなく,ツケを打つ裏方とも一体になって盛り上げており,お客さんもわんわんと受けている.明治20年の速記にさえ,柘榴口なんて古い話といっているのだから,圓生の説得力はすごい.

人形町末広跡
 豊島左衛門尉に嫁いだ足立姫が,嫁ぎ先と折り合いが合わずとうとう入水してしまう.それを悲しんだ父が,熊野で霊木を得て,かの行基に刻んでもらったのが六体の阿弥陀仏.残った木で彫り上げたのが,木余りの弥陀.足立姫の墓とともに性翁寺(足立区扇)にある.古い写真だが,背景のマンションが不気味でいい.
 その六体の阿弥陀仏を収める6つの寺を巡拝する習慣が六阿弥陀詣り.春秋のお彼岸のうららかな日に,遊山がてら連れだって回って歩いたらしい.今は,歩いて回るような物好きな人はいないだろう.今回,せっかくだからちゃんと順番に回ってみようかとも思ったが,地図を見ただけで行くのが億劫になってしまった.

足立姫の墓
 六阿弥陀の第一番,西福寺は都電王子駅から歩いて約10分.門柱にも六阿弥陀の文字が彫られている.よさこい節お馬の碑というものがあるらしい.
 第二番は,延命寺という寺だったが,廃寺となり,今は恵妙寺に合併している.王子駅から西新井駅行きの都バスに乗ると便利.荒川土手操車場前で降りるとすぐ.
 ここから第四番の与楽寺へは直通の都バスがあるが,順番に回るとなると,いったん王子駅に戻る.地下鉄南北線で1駅,西ヶ原で下車後,徒歩10分.古河公園に隣接する第三番の無量寺の門前には,六阿弥陀を示す石碑がたくさん建っている.帰りは,京浜東北線の上中里駅まで歩くといい.
 第四番の与楽寺は田端駅から徒歩.本堂の脇に阿弥陀堂がくっついている.田端には芥川龍之介や萩原朔太郎らの芸術家・文士が集い,駅前に田端文士村記念館がある.
 次の第五番,常楽院は上野駅の南,元の上野鈴本のあたりにあった.お寺は調布に移転してしまったが,池之端の横山大観記念館の横手に小さな阿弥陀堂が残されている.お彼岸には,誰かが花や野菜を備えているようだ.
 落語ではここから根岸を通っておそらく吉原のなじみの妓楼へ揚がったらしい.確かに五番と六番はずいぶんと離れている.第六番の常光寺は,亀戸駅から徒歩15分ほど.亀戸七福神の一つでもある.


六阿弥陀第五番
 はなしの足あと
 六阿弥陀:西福寺(北区豊島2-14)→延命寺(恵明寺に合併.足立区江北2-4)→無量寺(北区西が原1-34)→与楽寺(北区田端1-25)→常楽院(台東区から移転.調布市西つつじヶ丘4-9.池之端4-11に阿弥陀堂)→常光寺(江東区亀戸4-48).木余りの弥陀 性翁寺(足立区扇2-19)

掲載 100319

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