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三人旅   
東海道をのんびりと −さんにんたび−

 東京落語.東海道をのんびりと伊勢・上方へと旅する肩のこらない噺.箱根山の手前,小田原宿に宿泊するところがよく演じられる.そのほかの宿場の噺は失われてしまった.

 大あらすじ
 江戸っ子の3人連れが上方見物に出かける.旅慣れない3人だが,何かと道中に詳しいような見栄を張り,そのためにかえって失敗する.馬に乗って鶴屋という宿屋を探し当てる場面,その宿で飯盛を買う場面が1席となる.

 こぼれ話
 「八公に文公やぁーい.早く来いよー」
 「なんだい熊ぁー」
 「見てみろよ.一面の茶畑,これが日本一の駿河の茶だ」
 「え,茶だと.団子で茶が飲みてえ.くたぶれた.お茶にしよう」
 「何でえ,まだ歩き出したばかりじゃねえか.茶には早えよ」
 「じゃあ茶漬けでもいい」
 「食い意地が張ってやンなあ.もう少し行くと子育飴の茶店と夜泣石があらあ」
 「夜泣きそばでもいいから喰いてえ」
 「ほら,見てみろ.道の真ん中にでかい石があるだろう.これが夜泣石」
 「へえー.じゃまっけなものを放っておくんだな.腹へったぁ」
 「俺も足ィ豆ができて痛くってよ.ちょっと休もうじゃねえか」
 「そうさな.お前の豆じゃ腹の足しにならねえから,休んでいこうか.次の宿場の日坂はくず餅が名物だ」
 「くず餅.俺ァ餅には目がねえんだ.名代の食い物は残らず食べていきてえな」


日坂(保永堂版,広重)
 現代の東海道五十三次,急いでいくなら新幹線でわずか2時間半.どうせなら寄り道しながら楽しく行きたいものです.
 朝日を浴びながら東海道の起点,日本橋を渡って出発しましょう.最初に向かうのは地下鉄の大手町駅です.今回の趣向は,JR抜きの東海道の旅です.ホームに小田急線に乗り入れるロマンスカーがやって来ました.青く輝く列車を少年たちがうらやましそうにのぞき込んでいます.これに乗っていけば,箱根湯本まで直通です.
 湯本からは日本一の勾配を誇る箱根登山鉄道で強羅まで登っていきます.途中の小涌谷で温泉につかるもよし,老舗ホテルでランチをいただくのも魅力的です.終点の強羅からは,ケーブルカー,ロープウェイを乗り継いで湖尻を目指します.急ぐ旅ではありません,大湧谷の噴気で仕上げた黒玉子を買いましょう.湖尻からは海賊船に乗って芦ノ湖を縦断です.だんだん日も暮れ始めてきました.昔懐かしい箱根の関所を見学したら,バスで三島へくだります.三島からは伊豆箱根鉄道に乗り換え,終点の修善寺温泉でゆっくり休むことにします.

振り出しの日本橋
(江戸東京博物館)
 2日目,バスで土肥へ向かいます.早めに着いたので,金山見物をする時間がありました.土肥港からは駿河湾を横断するフェリーに乗って清水港までショートカットします.清水からは静岡まで静岡鉄道が通じています.晴れた日にはびっくりするほど大きな富士山を車窓から見ることができます.静岡では,とろろ料理,取れたてのサクラエビ,焼津港に揚がったマグロなど食べたいものがたくさんあるので,2日目はここで泊まってグルメ三昧と行きましょう.
 3日目,静岡空港を経由して西に向かう手もありますが,今日は思い切った変化をつけます.バスに乗って北へ北へと3時間も走ると,井川湖というダム湖に着きます.こんなところまで来てもまだ静岡市内です.井川湖ができて水没した線路をアプト式に付けかえて生まれ変わった大井川鐵道に乗りましょう.いろんな旧型車両が走ったり,SLが運転されたりと楽しい路線です.本当はアプト式は登り勾配で真価を発揮するのですが,今回は京都へ上る旅なので,登りには使わず上り列車に乗って下っていきます.今日のお宿は,寸又峡温泉にしましょう.鄙びた山間の温泉地です.

名物とろろ汁
 4日目,金谷からは「三人旅」の連中をしのんで,日坂までの一宿場を歩きます.金谷の石畳を上りきると,栄西禅師が伝えたという茶畑が広がります.牧ノ原台地をゆるやかにうねりながら続く旧東海道の途中には,夜泣石や西行ゆかりの見どころがあります.4kmほどで日坂宿に着きました.一休みしたら,ここからはコミュニティバスで掛川へと出ましょう.掛川は水戸黄門の出てくる「雁風呂」という落語の舞台です.
 掛川からは第3セクターの天竜浜名湖鉄道で,浜名湖の北岸をぐるっと回って行きます.駅舎を利用したそば屋や洋食屋などが入っていますので,途中下車しながらお好みのところでお昼ご飯はいかがですか.お腹がいっぱいになったら,天竜浜名湖鉄道の終点の新所原から2kmほど歩くことにします.静岡県を越え愛知県に入ると,豊橋までのバス路線が使えます.さあ,豊橋です.関西は私鉄王国,もう着いたも同然です.名鉄に乗って一気に名古屋に行くもよし,こだわり派はJRとの共用区間を避けるため豊川までバスで行って,豊川稲荷や御油の松並木,桶狭間の古戦場などに寄り道してもよし,今日のお宿の名古屋までまいりましょう.

夜泣石跡
 いよいよ,最終日です.ここまで来たのですから,伊勢神宮を参拝してから京都に向かいましょう.「三人旅」の一行も,一生に一度の伊勢詣りをしてから京都に行ったはずです.近鉄特急で1時間20分,あっという間に宇治山田に着きました.内宮,外宮も残らずお詣りしたら,五十鈴橋のたもとにある赤福の本店でできたての赤福餅をいただきましょう.そうそう,名物の伊勢うどんも食べましたか.お土産には,特産の丸薬「万金丹」はいかがですか.落語好きにはきっと喜ばれると思いますよ.
 再び近鉄特急で2時間あまり,京都駅まで行かず,途中の丹波橋で京阪列車に乗り換えます.三条駅から地上に出ると,目の間に東海道の終点,三条大橋が架かっています.橋を渡ってゴールイン.都合5日間の旅,お疲れさまでした.


三条大橋
 はなしの足あと
 道中付け:神田→品川→小田原→箱根山→三島

掲載 100110

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