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逆い夢   
芝居自慢 −さかいゆめ−

 上方落語.「上方はなし」に載っている.三代目笑福亭松鶴が写したとあるので,江戸時代の噺.「貸本屋の夢」のように,次々と芝居の人物や場面が現れる"ほこりたたき"の趣向が聴きどころ.

 大あらすじ
 次々と芝居の登場人物が現れ場面がかわっていく長い長い夢の話.大和橋で泥棒に金をもらったので,その辻占を訊ねると,北詰か南詰かとの質問.南詰と答えると"そらあかん,さかい夢や".

 こぼれ話
 大阪を南へ行くと,住吉大社や堺にでる.「住吉駕籠」や「始末の極意」といった住吉さんに参詣するメジャーな噺がある中で,ひねって「逆い夢」なんて噺を取り上げてみたが,荷が重い.
 逆い夢という言葉は聞いたことがないが,おそらく逆夢と同じ意味だろう.大和橋は大阪市の南,大和川にかかる川で,ここを渡ってしまうと堺,逆夢になるというのがサゲ.「貸本屋の夢」という噺と同様に,サゲよりも場面転換の意外性を楽しむ噺.上方落語にはこんな噺が多い.薩摩守忠度や茨木童子など片手を失った人物ばかり居候にやってきて,「手無い人」なんて高踏な小噺がある.雑誌「藝能懇話」の5号に,ざこば(1)が吹き込んだSP盤の「逆い夢」の文句が載っているので,それも参考にした.
 住吉参詣に行こうと家を出ると,岩井風呂でお富の様子を聞き,長町裏で駕籠に乗ろうとすると団七九郎兵衛が待てと言うので,駕籠の中は玉島磯之丞の相方琴浦かと思って駕籠を見ると(夏祭浪花鑑),吾妻の与次郎と浪花の次郎作(戻駕),駕籠の中を見ると禿でなくて,勘平の女房のお軽(忠臣蔵),そこへ猪名川が走ってくる(関取千両幟)といった具合に,駕籠の出てくる芝居が次々と連鎖する.と書くことは書けるが,どなたか芝居を見こんだ方に解説してもらわないと,ちゃんとした情景が浮かんでこない.
 駕籠の次は,順礼乞食つながり.春藤次郎左衛門(敵討襤褸錦),勝五郎と初花(箱根霊験躄仇討),宮城野信夫(碁太平記白石噺),阿波の十郎兵衛のおつる(傾城阿波の鳴門)が登場する.盲目の兵助と朝日奈藤兵衛(盲兵助)に与一兵衛と出てくるのは五十両の財布つながり.

住吉大社反り橋
 ずっと紙をめくって先へ進むと,住吉の三文字屋では楽器にゆかりの登場人物が次々と出てくる.三味線を弾いているのが菊野(五大力),与次郎の母親(猿回し),煙草屋源七(嫗山姥か),袖萩(奥州安達原),沢市つぁん.琴を弾じているのが阿古屋(琴責),朝顔(朝顔日記の深雪),諸葛孔明(三国志か),鼓を打っているのが藤屋伊左衛門(廓文章),静御前(千本桜),笹市松太郎の祖父さん(小坂部館),笛を吹いているのが牛若丸,敦盛,玄宗皇帝,鱶七(妹背山)で,落語に関係するメンバーも多い.大和橋の上では,黒船忠右衛門(新町橋),木下藤吉郎(矢矧橋),弁慶(五条大橋),俵藤太(瀬田唐橋)と橋にゆかりのメンバーが集まっている.
 一度堺まで行き小野道風に会って大和橋に戻ると,石川五右衛門らが泥棒の集会を開いているのを見かける.口封じに盗賊が現ナマと宝物を差し出してくるので,どっちにしようかと考えていると……

 −ちょっとあんた,いったい何の夢見たの?
 −ん,ああ.ナマでいいからもらっとけば...いやよそう,また夢見るといけねえ.


大和橋
 はなしの足あと
 道中付け:住吉→島之内鰻谷→太左衛門橋→岩井風呂→日本橋筋→毘沙門さん→長町裏→天下茶屋→岸野の里→住吉新家→三文字屋→住吉鳥居→浪花屋→大寺→大和橋

掲載 100813

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