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鷺取り   
押し寄せる群衆 −さぎとり−

 上方種の古典落語.東京では「雁取り」と題する.上方の桂枝雀(2)の熱演の印象が強い.民話の「鴨取り権兵衛」が原話ではあるが,途中にはさまれるニワカがいかにも落語らしい.

 大あらすじ
 鳥を捕まえる珍アイデアを隠居に披露する喜六.隠居の教えで,実際に鷺を捕まえられたが,取った鷺が多すぎて空に舞い上がってしまう.ようやく天王寺の五重塔につかまり難を逃れる.さて,どうして降りたらいいのやら.

 こぼれ話
 天王寺の五重塔の屋根に豆粒のような人を見つけた人が騒ぎ出し,どんどんと人数を増しながら天王寺に押し寄せてくる様子が目に浮かびます.一見馬鹿馬鹿しいニワカの文句が,群集の放つ激しいエネルギーを感じさせてなりません.

 導入部に,鳥を簡単に捕まえる方法が披露されます.1)伊丹のこぼれ梅を撒いてスズメを酔わせる.続いて落花生を撒くと,スズメが枕にして寝てしまう.それを手づかまえしてしまう.2)手に糊と色を塗って梅の古木に見せかける.ウグイスが手のひらに乗ったら,それを手づかまえしてしまう.3)サギに声をかけながら近づく.だんだん小さな声で呼びかけると,人が遠く離れていったとサギが勘違いする.それを手づかまえしてしまう.4)大阪の円頓寺に行く.サギの眠った隙を見て,それを手づかまえしてしまう.
 喜六の考えた1)〜3)は失敗するのに,一番工夫のない4)で大成功.皮肉なもんです.

萩の円頓寺
 サギを捕まえすぎたせいで,喜六はサギとともに宙に舞ってしまう.鳥の力で空を飛ぶ話は,海外の「ほら吹き男爵」にも見られます.
 命からがら喜六がつかまったのは高い高い建物の柱.こんなところで下ろすなんてサギやがな,とぼやいてもしかたありません.下には見覚えのある石鳥居に亀の池.見あたらないのが五重塔だけ.自分がつかんでいるのがまぎれもなく五重塔の九輪じゃないか.彼方にそびえる生駒の山に朝陽が昇りはじめました.  

天王寺五重塔から見たなら
生駒の夜明け
 それを見つけたのが玉江橋を渡っていた男.玉江橋から正面に天王寺の五重塔が見渡せたのが七不思議の一つ.あれは何でっしゃろ.ああ,野菜を収穫しているとこだす.あんな高いところに畑がおまんのか.はい,ズッキーニのツルがあそこまで伸びたんです.それにしても,五重塔に登るとは,よっぽど野菜が好きな人ですなぁ.さいな,よう言いまっしゃろ,ズッキーニなったら命がけ.   なんや,ニワカかいな.あ,ニワカじゃニワカじゃ.
 天王寺は見物人でいっぱいです.人を救うは出家の役目.大布団の四隅を坊さんが引っ張って広げると,塔の上の喜六に,ここへ飛べ!と大声を張り上げます.清水の舞台よりも何倍も高い五重塔の上,飛び降りた喜六は助かるのでしょうか.

 演者によって持っていき方が違います.大布団がすぼまって,四隅の坊さんが頭をぶつけて亡くなる悲惨な結末.布団でバウンドしてもとの塔に戻ってしまうマンガのような落ちもあります.これ使うて,とそっと一八が番傘を差し出すのはいかがでしょう.


高所注意!!
 はなしの足あと
 舞台の移動:萩の円頓寺→天王寺←玉江橋

掲載 100626

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