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竜宮界
 浦島伝説 −りゅうぐうかい−

 「小倉船」ともいう上方の旅ネタ.龍宮界龍都が本名題.水中を行く噺はこれくらいしか思いつかない.林家蘭丸の作という.サゲの良さは抜群.
 大あらすじ
 小倉からの船で落とし物をした男,乗り合いの人のフラスコに入って海底にもぐるとなんとそこは竜宮城.浦島と間違われて接待を受けていると,本物の浦島が到着し,その場を逃げ出す.そこに現れたのが猩々の駕籠屋.

 こぼれ話
 大阪の旅ネタは,東西南北各方向のほかに,海底を行く「竜宮界」,空を行く「月宮殿」,地獄を行く「地獄八景」がある.
 前半は船旅の様子,お金を賭けての謎かけがはさまれる.財布を落とした男が,南蛮渡来のフラスコに入って水中にもぐるのは,「水中の玉」と同趣向.海底に竜宮城があるという設定は,壇の浦の戦に敗れ,幼い安徳天皇に水の底にも極楽があると説き聞かせて入水した二位の尼と女官の逸話を踏まえている.安徳天皇をまつる赤間神宮の門もまるで竜宮城のよう.

馬関赤間神宮
 財布を見つけた男,フラスコを破って海底に降り立つ.今まで息が苦しいのでフラスコに入っていたのに,外へ出てどうやって息をするのだろう,というツッコミはなしにして.というのは,この噺,もともと小倉船と竜宮界という2つの噺をつなげてできたらしいのだ.後半は竜宮を舞台にする芝居噺の世界.
 丹後の国は与謝郡,水江の里の浦島さまのセリフの通り,水江の浦島神社に行くと玉手箱まで出して浦島伝説の絵解きをしてくれる.さて,ひとしきり乙姫のもてなしを受けたニセ浦島,本物の浦島太郎の登場にあわてて逃げだす.そこへ立ちふさがる代官の鰒腸蝶安,サアサア返事は何と何とと詰め寄る.ツケ入りの大立ち回り,ひっくり返る花四天ならぬ魚四天.きりがないと逃げだす浦島、ヤ,ドッコイショ.

水の江里浦嶋公園
 そこへ「駕籠やりまひょ」の意外なセリフ.芝居の世界から現実に引き戻される.水でつながっていればどこでも行くというので,天保山の沖か天王寺の亀の池に行ってくれと頼む.天王寺には龍の井戸と亀の井があり,地下水脈で四方八方につながっているのだ.駕籠賃を訊ねると,二分と破格の安さ.ひょいと見ると,駕籠かきの姿が異様だ.体躯はでかく,真っ赤なサルのような顔に長くて赭いの髪の毛.芝居で見たあの猩々だ.「やめとこ,駕籠賃安うても酒手が高こつく」.洒落てるなぁでサゲ.

 しまった,また鰒腸蝶安だ.ヤ,ドッコイサノサ(韋駄天の合方,次第にかすめる).


猩々(和漢三才図会)
 はなしの足あと
 舞台の移動:小倉→船中→竜宮城

 「水中の玉」:東京湾に沈没した難破船の財宝を探しにガラスのビンに入って潜る.宝を見つけたが手が出ない.

掲載 100903

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