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狐つき
 江戸の稲荷づくし −きつねつき−

 東京の稲荷が総出演する噺.昭和4年に大阪の大文館から出版された『新落語全集』に載っている.
 大あらすじ
 王子にすむ狐が人間となって稲荷ずし屋を始めた.その店先に狐つきが現れ,訳のわからないことを言いはじめる.すし屋の主人,元が狐だけに稲荷のことに詳しく,取り憑いた狐を稲荷問答でやり込めて退散させる.

 こぼれ話
 青蛙房の落語事典によると「狐つき」と題する噺は4つあるという.1つめにあげられているのがこの噺で,大阪の大文館から出版された『新落語全集』に小遊三の名義で速記が載っている.2つめは,熊沢蕃山という実在の学者が,狐つきを追い払う噺で,三遊亭圓生(6)の『圓生全集』別巻に載っている.3つめは,清文堂の『名作落語選集』に「蛙の子」という題で小圓蔵名義の速記が載っている.蛙の子は蛙,道楽好きの親には道楽息子が生まれるというところから噺がはじまるので「蛙の子」という演題らしい.実際は,染め物の色と動物憑きとの勘違いで落ちがつくので,落語事典では「狐つき」という題に改められている.最後は「稲荷のみやげ」が本題の噺で,三芳屋の四代目笑福亭松鶴の速記本に載っている.道楽息子が狐つきの振りをして稲荷信仰の親父をだます噺.どれをとっても珍品で,寄席で聴いてみたい噺ばかりだ.
 なかでも,この「狐つき」は東京のお稲荷さんが総出演し,落語地名好きにはたまらない噺だ.

源九郎稲荷
 登場するお稲荷さんは,39ヶ所もある.奈良郡山にあるのは源九郎稲荷,九郎判官源義経がこの稲荷に助けられ,源九郎の名を与えたという.「狐つき」とは別に「源九郎狐」という落語もある.太郎稲荷は御利益を「ぞろぞろ」と与えたお稲荷さま,信田の森は「親子茶屋」と「天神山」,王子稲荷はご存じ「王子の狐」の舞台となる.御利益もいろいろで,家内繁盛,子孫繁栄ばかりでなく,鯖稲荷は歯痛の神様,砂村のは疝気の神様,半田稲荷は疱瘡の神様と担当が分かれている.
 文京区にある沢蔵司稲荷は,伝通院の寺僧に姿をかえて修行していたが,腹が減っては近所のそば屋でちょくちょく蕎麦を食べに出かけていたという.そのお代を木の葉で支払ったというから,神様としてはちょっとけしからんところがある."沢蔵司てんぷらそばがお気に入り"という,まあ狐だから揚げ物なのねという古川柳も残っている.


沢蔵司稲荷
 はなしの足あと
 登場する稲荷:大和国源九郎,近江の国小左衛門,太郎稲荷,白蔵主稲荷,船玉稲荷,玉姫稲荷,三囲稲荷,合力稲荷,篠田の森稲荷,小綱町の杉の森,鉄砲洲,柳原の柳森,小石川の沢蔵堂,市ヶ谷の茶の木,飯田町の世継,神田の三崎町,駿河台の太田姫,小川町の五十稲荷,上野の穴の稲荷,下谷神社,湯島の妻恋稲荷,谷中の笠森稲荷,芝山内の瘡守稲荷,日影町の鯖稲荷,砂村の五智稲荷,葛西金町の半田稲荷,八官町の穀豊,金春稲荷,越前堀の田宮稲荷,赤坂の豊川稲荷,浅草の被官稲荷,高原町の熊谷稲荷,本所の玄徳稲荷,羽田の穴守,池上の長栄,王子稲荷,三州豊川稲荷,常州笠間の紋三郎稲荷,京都の稲荷山

 「源九郎狐」:郡山の源九郎狐が東京見物,ホスト役は神田の妻恋稲荷.二次会で吉原の妓楼へ上がる.置いてあった初音の鼓を叩くと,源九郎狐は「照る日がうらやましい」.新造が「振っておやんなさいまし」.

掲載 110121

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