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十八檀林   
落語速記の価値 −じゅうはちだんりん−

 幻の小品.艶笑落語「鈴ふり」のマクラに使われるが,サゲまでは語られない.実は意外性のあるトタン落ち.古今亭志ん生演の2つの速記がある.

 大あらすじ
 以前,十八檀林といって,18ヶ所の浄土宗の寺を長い年月かけて順に修行していき,末に大僧正になるコースがあった.一番下谷の幡随院から修行を続け,十七番鎌倉の光明寺,十八番芝の増上寺を抜けると,赤羽に出た.

 こぼれ話
 結局「十八檀林」の速記は見つからなかった.古今亭志ん生(5)が,「鈴ふり」のマクラで,坊さんが十八檀林を回って厳しい修行をすると話すところしか見あたらない.檀林は僧の修行場という意味らしい.今は檀林として活動していないので,なかには関東十八檀林を名乗るのをやめている寺もある.小噺としては,本来,18ヶ寺をきっちりならべないといけないのだが,そこは志ん生,数も順番も出たとこ勝負だ.
 関東地方のページの繰り返しになるが,同じ音源をもとにしているのに,立風書房の「鈴ふり」では編者の配慮で18ヶ寺ならべてあり,弘文出版の「鈴ふり」では,話したまま15ヶ寺しかない.速記は台本ではない.立風書房版を読んだ人には,本当の志ん生像は伝わらない.作家の結城昌治は,十八檀林の言い立てを質問した息子の志ん朝に対して,志ん生にこう答えさせている.「寄席は学校じゃねえんだ。間違ったって直したりしちゃいけねえ」


飯沼の弘経寺
 と書いたら,はるか遠く,ドイツからコメントをいただいた.1961年の東横落語会の音源では,寺名こそおかしい所があるものの,ちゃんと18ヶ寺を言い立てているそうだ.さすが志ん生,型にとらわれる境地を脱し,自在に演じていたのだ.

 サゲに出てくる芝の赤羽は,北区の赤羽に比べて知名度が低い.しかし,地下鉄大江戸線に赤羽橋という駅ができたので,赤羽の地名は復権してきている.以前よりもずっと演じやすくなっているはずだ.むしろ人形町にある有名な水天宮を,移転する前の有馬邸の水天宮のまま使ってみたい."増上寺を抜けて赤羽の水天宮に出た"で高座を降りて,聞いているお客をポカンとさせるくらいの方が,素人考えではおもしろい.


赤羽橋駅
 一応,交通案内を.幡随院−JR中央線武蔵小金井駅より徒歩.勝願寺−JR高崎線鴻巣駅より徒歩.蓮馨寺−西武線本川越駅より徒歩.浄国寺−東武線岩槻駅より徒歩.東漸寺−JR常磐線北小金駅より徒歩.大巌寺−JR蘇我駅よりバス.大善寺−JR中央線八王子駅からバス.大念寺−JR常磐線土浦駅よりバスまたは東京駅から高速バス.善導寺−東武線館林駅よりタクシー.霊山寺−地下鉄押上駅から徒歩.結城の弘経寺−JR水戸線結城駅より徒歩.飯沼の弘経寺−関東鉄道常総線水海道駅からタクシー.霊巌寺−都営地下鉄清澄白河駅より徒歩.大光院−東武線太田駅より徒歩またはタクシー.常福寺−JR水郡線瓜連駅より徒歩.小石川の伝通院−地下鉄春日駅よりバス.光明寺−JR横須賀線鎌倉駅よりバス.増上寺−都営地下鉄芝公園駅より徒歩.


赤羽(部分)(江戸名所図会,長谷川雪旦)
 はなしの足あと
 立風書房:下谷の幡随院→鴻巣の勝願寺→川越の蓮馨寺→岩槻の浄国寺→下総小金の東漸寺→生実の大巌寺→滝山の大善寺→常陸江戸崎の大念寺→上州館林の善導寺→本所の霊山寺→結城の弘経寺→下総飯沼の弘経寺→深川の霊巌寺→上州新田の大光院→瓜連の常福寺→小石川の伝通院→鎌倉の光明寺→芝の増上寺 (古今亭志ん生)

 弘文出版:下谷の幡随院→鴻巣の勝願寺→川越の蓮馨寺→滝山の大善寺→里見の大厳寺→館林の善導寺→本所の霊山寺→結城の弘経寺→飯沼の弘経寺→深川の霊厳寺→新田の大光院→水戸の常福寺→小石川の伝通院→鎌倉の光明寺→芝の増上寺 (古今亭志ん生.1964.10.31か)

 東横落語会:下谷の幡随院→鴻巣の誓願寺→川越の蓮華寺→岩国の浄国寺→跡見の大巌寺→小金井の東泉寺→滝山の大林寺→江戸崎の大念寺→館林の善導寺→本所の霊山寺→結城の弘経寺→飯沼の弘経寺→深川の浄心寺→新田の大光院→水戸の光福寺→小石川の伝通院→鎌倉の光明寺→芝の増上寺 (古今亭志ん生.1961.5.30)

 東宝名人会:下谷の幡随院→鴻巣の誓願寺→川越の蓮華寺→岩槻の浄国寺→小金井の東泉寺→跡見の大巌寺→滝山の大林寺→江戸崎の大念寺→館林の善導寺→本所の霊山寺→結城の弘経寺→飯沼の弘経寺→深川の浄心寺→新田の大光院→鎌倉の光明寺→小石川の伝通院→鎌倉の寺→芝の増上寺 (古今亭志ん生.1964.1.31)

掲載 101006

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